[日曜の風]即位の礼 いいのか?皇室利用


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 皇室利用はどこまで許されるのだろうか。新天皇が御即位されるための儀式「即位の礼」は、誰が主役であるのかと言いたくなった。

 即位の礼に伴い安倍晋三首相がテレビジャックをしていた。テレビでは安倍首相夫婦が主催する晩餐会(ばんさんかい)や、首相と各国元首らの62人とのマラソン会談の話題ばかり。

 馬鹿(ばか)らしい。通訳も入れて30分から10分の会談にどんな意味があるというのだ?

 開催が来月に延期されたパレードには、安倍首相らまで参加するという。だいたいパレードが延期されたのは、台風被害に遭われた方を考慮してだ。そういうことを考えれば、ラグビーに、皇室行事に絡めたお祭り騒ぎ、安倍首相はよく遊んでばかりいられるなぁとあたしは思う。

 話を戻して、この国に余裕があって国民も豊かで、遊び好きな首相というならまだ許そう(実際はそう思えないが)。いや、それでも許せない、もしくは怖いと思う、堂々と皇室を利用する安倍政権が。

 皇室の儀式を国事行為とすることが、憲法の政教分離原則違反であるという堅いことは言わない。避難所を訪れる陛下に感動の涙を流す人はたくさんいるし、海外の要人のおもてなしは下品な政治家夫婦がやるより、よほど安心して見ていられるのが事実。

 しかし皇室を、時の政権が自分たちのもののように扱うのには異議がある。

 先の戦争は、天皇陛下を中心とする国家神道が利用された。天皇は神とされ、国民はそれに従わざるをえなかった。こういう話をすると必ず、政権批判に皇室を利用するなという者が湧いてくる。皇室を利用している者に利用されている者だ。皇室の政治利用を批判されたらそう返せというテンプレート(ひな形)があるようだ。

 違うだろ。皇室を利用している者がいちばん皇室を軽く見ている。上皇陛下や天皇陛下のお言葉をちゃんと聞いていればわかる。天皇陛下万歳と喜々としていう者が、改憲したがるという矛盾。

(室井佑月、作家)