中距離核戦力(INF)廃棄条約に当時の米ソが調印してから30年の節目を迎えた2017年にゴルバチョフ氏が出したメッセージは次の通り(要旨)。
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核兵器廃絶への道が今、閉ざされようとしている。より強力な新型核兵器が開発され、ミサイル防衛システムが配備され、破壊力が核兵器に匹敵するような兵器が造られ、核兵器を容認する危険な軍事教義が採用されている。この背景の下、核兵器拡散の危険が増しつつある。
最悪なことは近年、米ロ間の信頼関係が損なわれていることだ。今でも大量の核兵器を所有する両国は世界の平和と安全を維持する責任があり、核兵器廃絶に向けて努力しなければならない。これは核不拡散条約で両国がコミットしていることだ。
過去20年間の国際問題は平和的、政治的、外交的な手段によって解決できたはずなのに、米国はこれを武力によって解決しようとした。旧ユーゴスラビア、イラク、リビア、シリアのケースもそうだった。その結果は、問題の解決にはつながらなかった。国際法は蹂躙(じゅうりん)され、信頼関係は失われ、政治思想は「軍事化」され、武力信仰が生まれた。
このような環境の中で核兵器廃絶を説くことは、一層難しくなった。国際関係が武力信仰から解放されて「非軍事化」されなければ、我々の非核化の目標はますます遠のいてしまう。
私は核兵器廃絶は現実的に可能だと強く信じている。核のない世界はユートピアではなく、絶対的に必須なのだ。私は引退した政治指導者たちや外交官、科学者、専門家、世界の市民社会に強く求める。はっきりと強い言葉で主張しよう。核兵器は廃絶されなければならない。戦争は廃絶されなければならない。
国際法の全ての原則の中で、国際関係における武力の不使用と紛争の平和的解決は、何よりも重要と考えられるべきだ。
これらを実現するためには、国連、国際裁判所などの既存の仕組みが強化されなければならないし、必要があれば新しい仕組みを作る必要があるだろう。
人類が直面している世界問題のどれも軍事的手段によって解決はできない。人類共通の問題である核兵器削減、テロリズム、環境問題、貧困問題をもう一度、我々の一番の議題にしなければならない。