3Dデータで製造業支援 デジタルエンジニアリング普及へ 生産性向上につなぐ


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パソコンで3Dの図面を製作する技術者=30日、うるま市の県金型技術研究センター

 県工業技術センターが、コンピューターを活用して製造業の生産性向上などにつなげる「デジタルエンジニアリング」の普及に力を入れている。コンピューター上で3次元の形状を設計する「3DCAD」や、物質の強度を解析できる「CAE」、立体形状をデータ化できる「3Dスキャナー」などを企業に実際に利用してもらい、導入を後押しする。これらの技術で製作した3Dデータを基に、立体を成型できる「3Dプリンター」で、試作品の製造を支援している。

 3Dプリンターは樹脂を原料にして立体を成型するものから、鉄やアルミ、チタンなど金属の粉末を原料に立体加工できるものまでさまざまな種類がある。

 デザインマンホールを製造する沖縄鋳鉄工業は半年ほど前から、2次元の図面を書き起こして職人が手作業で製造していたデザインの型を、3Dプリンターによる造形に置き換えた。一部のパーツでは、熟練技術者が1日を要する作業が2時間に短縮できた。

 モズク漁などに使う潜水マスクを製造する旭潜研は、約1年前に3DCADと3Dプリンターを導入したことで、外注していた製品の試作を自社で行えるようになった。外注では約2週間かかっていた試作品の製造期間が2日に短縮でき、大幅なコスト削減につながった。

 県産自動車の製造などに取り組むものづくりネットワーク沖縄は、企業の依頼を受けて3Dの図面を設計する事業を手掛ける。大手自動車会社などからの発注もあり、技術の活用を進める。複雑な金属加工などができる「5軸加工」という最先端の技術も活用し、高精度の部品作成に取り組んでいる。

 県商工労働部の嘉数登部長は「沖縄には製造業が根付かないと言われてきたが、現場では最先端の技術が活用されている。普及には時間がかかるが着実に進んでいる。こうした取り組みを行政サイドから支援したい」と話した。