資材、職人の調達に困難 国と県 復帰50年向け協議 首里城再建の課題(1)


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菅義偉官房長官へ首里城早期再建を要請後、記者団の質問に答える玉城デニー知事=1日、首相官邸

 玉城デニー知事は終始、顔をこわばらせていた。1日夕の首相官邸。部屋で菅義偉官房長官を待つ間も硬い表情は崩さず、迎えた菅氏と握手はしたものの、重い沈痛な空気が続いた。「できるだけ速やかに体制を整え、県民の多くの方々と共に首里城の復元に向けてしっかりと取り組んでいきたい」と玉城知事は政府の支援を求めた。会談の重い空気は、首里城の焼失という大きな衝撃に加え、これからの再建に向けた課題の大きさも想起させた。

 もともと玉城知事の上京日程は、米軍の嘉手納基地でのパラシュート降下訓練強行に対する外務・防衛への抗議要請で調整していた。ところが首里城焼失で急きょスケジュールを変更、再建支援への要請に切り替えた。

シンクロする思い

 沖縄ではまだ玉城デニー知事が被害状況を確認していた10月31日、政府の閣僚らからは早々と再建に向けた決意が相次いだ。その翌日の玉城知事による早期再建要請。国と県の再建への思いは重なる。

 玉城知事は1日、菅氏に首里城再建を沖縄の日本復帰50周年の節目の事業として進めたいとの思いを伝え、再建計画策定の考えを表した。ただ玉城知事が記者団に「資材が確実に手に入るかは、これから検討しなければならない」と語ったように、材料調達や職人の手配など復元時の苦労を踏まえると、再建への道には難しさも見えてくる。

 新たな沖縄振興計画への節目ともなる復帰50周年に合わせた再建構想。新振計の策定に向け今後、政府との折衝が本格化する中で、首里城再建がどう位置付けられるのかは見通せない。

政府が積極的な理由

 火災原因も判明しない中、関係省庁が一丸となって再建に向けた取り組みを急ぐ背景について政府関係者の1人は「原因がどうであれ、立て直さないという選択肢はない」と指摘する。那覇空港第2滑走路の運用開始も控える中、「沖縄観光の主要な目的地にもなっている」首里城がない期間が長くなればなるほど、沖縄経済に水を差す恐れも高まることから、再建を急ぐ必要性を強調する。

 別の政府与党関係者は、与野党がこぞって再建を急ぐ必要性を訴える現状に「(政治家が)功名を立てたい面もあるのでは」と冷静に見る。全国的にも強いインパクトを与えた火災を乗り越え再建を成し遂げるという“実績づくり”につなげたいとの思惑もにじんで見える。

 これまで沖縄と政府の関係は基地問題を巡り対立関係が続いてきた。政府の積極姿勢は緊張緩和の演出との見方もある。だが与党国会議員の1人は、基地問題と首里城再建が絡むと見られると「沖縄側の反発は大きくなる。そう見られることには国も慎重になる」と指摘、“演出”には否定的な見方を示した。

(滝本匠、知念征尚)

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 首里城焼失で再建に向け国と県がそろって動きだした。だが前回の復元でも資材の調達や技術の集積を巡り多くの困難があった。火災原因の検証や再発防止策も重要な要素となる。再建に向けた課題を追う。