10月31日未明に起きた首里城の火災の影響で県立芸大祭が中止となったことを受け、2、3日の日程で開かれている那覇市の壺屋やちむん通り祭りに、急きょ同大学の学生らの出店が決まった。年1回の芸大祭に向けて数カ月前から準備を進めてきた学生らの求めに、壺屋やちむん通り会が無料で出店を認めた。陶芸家らが沖縄の陶芸界を担う学生らの思いをつなぎ、学生らも売り上げを首里城再建に向けて寄付する考えだ。首里城の再建を願い、焼失のショックから前へ進もうと、思いを一つに動き出した。
県立芸大祭は2、3日の日程で開かれるはずだった。だが、首里城の火災で中止が決定。県立芸大工芸専攻陶芸分野の学生らが、祭りに向けて7月ごろから準備してきた作品の行き場が失われた。
大学のキャンパスからいつも見えていた首里城の正殿。同じ学部には染め物や織物、漆など、首里城に関係する沖縄の伝統工芸を学ぶ学生や、教員なども多い。研究資料が燃えた可能性のある学生もいるなど、首里城焼失は学内に暗い影を落としている。「年に1回の貴重な場。学内の雰囲気を考えても、どうにかしたいと思った」。同大3年次の須藤祥太郎さん(20)が市立壺屋焼物博物館に依頼し、通り会が快く受け入れたという。通り会の金子康一会長は「沖縄のシンボルが燃えたのは残念だが、落ち込んでばかりはいられない。祭りを通して学生らと共に前へ進みたい」と語った。
2日午前、学生らが出店すると多くの人だかりができ、作品は飛ぶように売れた。学生らは客から「頑張ってね」と声を掛けられ、壺屋の陶芸家からも「若い子たちの陶芸を楽しみにしている」と励まされた。芸大卒業生も学生らの力になりたいと足を運んだ。
終わってみると数百点の作品が売れ、温かい声を掛けられた学生らは口々に「良かった」と笑顔で語り合った。須藤さんは「受け入れてくれて感謝しかない」と通り会に感謝した。
壺屋やちむん通り祭りは3日午前10時~午後6時まで那覇市の壺屋やちむん通り周辺で開かれる。首里城再建を願い、首里平良町の旗頭も通りを練り歩く。
(池田哲平)