「はいたいコラム」 島生まれのチーズ


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 島んちゅのみなさん、はいた~い!

 チーズの消費量が過去最高を更新しています。韓国料理のチーズダッカルビやタピオカドリンクの次に流行(はや)るとウワサの台湾発のチーズティーなど、料理からドリンクまでさまざまな食シーンでチーズ市場が拡大しています。相次ぐ貿易協定の発効で輸入品に押される国産チーズですが、同時に支援も強まり、全国にチーズ工房は増えています。20年前は150だった工房の数は今や300を超えました。先週、生産者による「一般社団法人日本チーズ協会」が設立され、同日開催された「オールジャパンナチュラルチーズコンテスト」には、全国から86工房が集まりました。

 沖縄からも2軒参加していました。読谷村の「リトルグリークキッチン」と「宮古島チーズ工房」です。いずれも近隣の酪農家の牛乳を使った島ならではのチーズで、宮古島のみそと酒かす、紅芋のこうじに漬け込んだ「紅まる」は、コクと甘みが豆腐ようを思わせる味わいでした。

 穀物のとれない土壌に家畜を放つ酪農から始まったチーズ文化は、一般には北部地方の食のようですが、生産者の努力で南国のチーズの評価も高まっています。

 宮崎県小林市で代々続く「ダイワファーム」の大窪和利さん(64)は、酪農家であり、チーズ名人でもあります。生乳出荷のかたわら、アイスクリームや乳製品の加工販売を経て、50歳で本格的にチーズを始めようとしたその時、ある専門家から「南九州で良質なチーズは作れない」と断言されたそうです。その言葉が大窪さんを奮起させました。人ができないと言うならそこにこそ商機はある。本場でチーズを学ぼう!イタリアへ何度も勉強に通い、今では奥さまも長男もチーズ職人となり、ウォッシュタイプから長期熟成までさまざまな種類を作り、全国大会で金賞や銀賞を受賞しています。草を食べた牛が出した乳を土着菌で発酵させるチーズは、地域の個性、テロワールそのものです。

 さて、沖縄といえばヤギ文化です。飼料効率のよいヤギの乳は、環境に配慮した食べ物として世界で見直され、特にヤギチーズは人気です。ヤギ刺しもヒージャー汁も伝統ある島の食文化ですが、泡盛に合うヒージャーチーズならシャンパンとキャビアよりもよほど持続可能な食として意識高いセレブに喜ばれるかもしれません。

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。

(第1、3日曜掲載)