県移管後も「国の基準適用」 沖縄県、火災との因果関係否定 利活用については… 首里城再建の課題(3)


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 国営沖縄記念公園の首里城正殿などの有料区域は、今年2月に国から県に管理が移行された。インターネット上には「県への移管で管理基準が緩み火災につながったのでは」との声や、与党国会議員の間には「県が管理していた以上、説明責任は免れない」との厳しい指摘もある。県の管理体制の検証や十分な説明は再建に向けた課題となっている。

 国営区域の県への移管は、民主党政権下の2012年5月に開かれた沖縄復帰40周年記念式典で、当時の野田佳彦首相が方針を表明した。県としては、城郭内の国営の有料区域部分が県に移管されれば、城郭外の無料区域の県営公園と一体化できる。県主体のイベントなどで首里城を積極活用したい狙いもあった。

 県への移管に伴い、施設の実質的な管理・運営を担う指定管理者は、外部識者が構成する制度運用委員会の審査で沖縄美ら島財団に決定した。国が都市再生機構に首里城公園の管理を許可していた時も、都市再生機構が同財団に業務を委託していた。県の公募に申請した団体は同財団のみ。指定管理の期間は2019年2月1日から23年1月31日までだった。

 県移管後も同財団は、国が定める「首里城地区における行催事に関する事項」に沿って管理運営を行い、国営区域は火気の使用を禁じていた。県の担当者は「火災時は国の基準に沿っていた。移管後に管理方法を緩めたことはなく、火災と移管に関係があるとは認識していない」と話している。同財団も1日の会見で、警備員の人員や巡回場所、回数なども変わっておらず「同じ状況で管理している」と説明した。

 しかし、国の基準には正殿の前に広がる御庭(うなー)で会場設営をする場合「深夜に及ぶ設営は原則認めない」という記載がある。同財団によると、火災時にも国の基準を適用していたが、準備が間に合わないことなどを理由に10月31日午前1時ごろまでの設営を例外として業者に認めていたという。

 国の基準では、国営区域の利活用の内容を祭りや儀式の再現などに限定していた。しかし、県は観光や文化振興に関連付けた内容で柔軟に利活用するため、国の基準を基に県独自の基準制定に取り組んでいる最中だった。

 県の独自基準は火災があった10月31日時点では策定途中で完成しておらず、県は国の基準を適用していたとするが、深夜までの設営作業や、今月はじめに首里城北殿で予定されていた歓迎レセプションなど、国の基準は、より柔軟に運用されていた。

 県は70歳以上の県民限定で入場料を無料にするなど、県民に親しまれる施設運営も試みていた。しかし管理者として最も優先するべき「県民の心のよりどころ」を守るための取り組みが、利活用の優先によってないがしろにされていなかったか。今後の教訓とするためにも十分な検証と説明が必要となる。
 (関口琴乃)