観光業、新たな「定番」探る 首里城火災で過去最高更新する消費額への影響は… 首里城再建の課題(4)


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首里城が焼失した後も、守礼門で記念撮影する人は後を絶えない=4日、那覇市

 首里城は沖縄観光の目玉として多くの観光客が訪れてきた。歴史や文化を学べる施設として、修学旅行の定番コースだった。観光業界では、メインの施設を失った影響を懸念するとともに、首里城に代わる新たな観光を模索する動きが始まっている。

受け入れ態勢強化

 火災が起きた当日から、旅行各社は代替施設へのコース変更の対応に追われた。斎場御嶽や識名園などの観光施設には団体客受け入れに関する問い合わせが相次いだ。当日だけでも斎場御嶽には30件以上の問い合わせがあり、団体客の受け入れが少ない玉陵でも3件の団体予約の受け付けがあった。玉陵管理指導員の宮城春彦氏は「入園者増加の兆しが見える」と話す。

 年間で首里城に訪れる280万人が他の施設に分散するとなると、先々で新たな混雑の発生が予想される。沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)の下地芳郎会長は、代替施設との情報交換の場が必要としており、「時間をずらして入場するなど工夫すれば受け入れは可能になる」と話した。

 国内外のメディアやネットで首里城火災のニュースが流れる中、誤った情報の拡散を懸念する声も上がる。ある旅行社では、誤ったネットの情報を基に火災の原因を認識している社員もいたという。迅速で正しい情報発信も課題だ。

 1日に開かれた観光事業者らによる緊急会議(OCVB主催)では、県内の観光施設の防災設備をあらためて点検し、火災現場以外の施設は安全であることなどの情報を、なるべく多言語で発信していくことを確認した。

周辺スポットの活用

 観光事業者からは、一日も早い開園と再建を望む声がある。現在の首里地域には焼けた首里城を写真に収めようとする観光客の姿が見られるものの、団体客の姿はない。今後の観光客減少の危機感をあらわにする周辺事業者もいる。

 りゅうぎん総合研究所の武田智夫調査研究部長は、土産品購入や飲食代金への影響については「短期的には金額的にそこまでの大きな影響はない」と分析。一方で「那覇空港第2滑走路供用開始や、東京五輪などでインバウンドをさらに呼び込もうとするタイミングで、沖縄のシンボルがなくなった。中長期的な影響は出てくると思う」と、沖縄観光全体に影響が波及していく可能性を懸念する。

 1日の緊急会議で観光事業者らは、燃えずに残っている施設や周辺スポットを活用した観光の打ち出し方次第で客を引き続き呼び込めるとの見方を示した。

 県ホテル旅館生活衛生同業組合の宮里一郎理事長は「歴史を学べる施設は周辺に多くある。首里城の復興までの歴史を勉強するにも良い機会だ」と強調する。

 県経済の柱である観光業を維持できるのか―。風評被害の払拭(ふっしょく)や受け入れ態勢づくりが急務となっている。
 (中村優希)