「島豆腐業界の窮地を救いたい」 廃棄されるおからを商品化するには? 沖縄高専の学生ら研究 乳酸菌でアミノ酸豊富に


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 沖縄の食文化に欠かせない伝統の味「島豆腐」。その製造工程で発生する「おから」は栄養豊富だが、日持ちの問題から商品化されることは少ない。そのため大量に発生するおからの廃棄には多くの費用がかかり、製造者の利益を圧迫している。製造者を廃棄費用の負担から救い、おからを有効活用するための研究に奮闘したのが国立沖縄工業高等専門学校の学生らだ。3年にわたる研究の結果、乳酸菌を用いておからを発酵させることで、筋肉増強作用のあるアミノ酸(BCAA)を多く含んだおからが作れることを発見。食品廃棄物の削減や健康食品への商品化に向け希望を見いだした。

なかむら食品(南城市知念)を訪れ、研究成果を報告した沖縄高専の池松真也教授(左端)と学生ら=10月17日

 研究したのは池松真也教授と5年生の新垣さくらさん、川満日向子さん、新垣奈瑠瀬さん。きっかけとなったのは、南城市知念で島豆腐を製造する「なかむら食品」の先代社長・仲村正雄さんが池松教授におからの廃棄問題について話し「商品化など有効活用につながる研究をしてほしい」と相談したことだった。

 池松教授の声掛けによって集まり、当時3年生だった3人が島豆腐業界の窮地を救おうと研究を始めた。新垣さくらさんは研究当初を「実験器具の使い方にも不慣れで大変だった」と振り返り、はにかんだ。

 研究では、さまざまな条件下で発酵させたおからで見つかった96種類の乳酸菌を単離し、1株ずつ培養した。その中からBCAAを多く作り出す3株を特定し、おからに植菌することでBCAAを通常より多く含むおからを作ることに成功した。

 この結果を応用して、筋力が低下した高齢者向けのBCAAを豊富に含んだ健康食品の開発などにつながれば、おからの廃棄量削減とそれに伴う処理費用の負担軽減が期待できる。

 英雑誌にも掲載された同研究の将来的な可能性について、川満さんは「成果がぜひ商品化までつながってほしい」と笑顔で語った。新垣奈瑠瀬さんは「島豆腐が厳しい状況にあることを学んだだけでなく、製造者の方々の熱意にも触れてとても良い経験になった」と目を輝かせた。

(下地陽南乃)