主導権、財源… 首里城再建へ党派越え取り組むも思惑交錯 首里城再建の課題(6)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 首里城再建に向けた動きが党派を超えて広がっている。とりわけ、政府与党の動きの早さが際立つ。菅義偉官房長官は消火活動が続いていた10月31日午前の定例会見で「再建に向けて、政府としては全力で取り組んでいきたい」と表明。午後には与野党の県関係国会議員が相次いで国土交通省や内閣府沖縄担当部局に対し、早期の再建に向けた政府の支援を要請した。1日には超党派の県関係国会議員が衛藤晟一沖縄担当相に再建に向けた協力を求めるなど、異例の取り組みも広がった。

首里城再建に向け第1回関係閣僚会議の冒頭で早期再建に決意を示す安倍晋三首相=6日、首相官邸

超党派

 議員の一人は沖縄の主要な観光地だった首里城がなくなり、経済振興にも影響が出る懸念があるとし「再建に向けた思いに与党も野党もない」と強調する。ただ、課題も山積する。林野庁は7日の参院外交防衛委員会で、原材料となる木材・チャーギ(いぬまき)が国内で調達するのが難しいと明らかにした。再建に携わる職人の確保も含め、解決すべき難題は多い。

 再建を巡っては衛藤沖縄担当相が国主導で再建を進める考えを示す。一方、「県が主体となって予算の確保をする」(維新の下地幹郎衆院議員)、「県民が主体となり、国と県がバックアップするべきだ」(共産の渡久地修県議)との声も上がる。一部国会議員には、県民の力による自主再建を目指すべきだとの声も寄せられている。再建に向け、県と国のどちらが主体となるかが焦点になっている。

 「国に頼らず県が再建すべきだ」「国が責任を持って再建すべきだ」。ツイッターやフェイスブックなどSNS(会員制交流サイト)でも再建の在り方が活発に議論されている。

 ただ、関係省庁からは「何にどれだけ予算や時間がかかるかは、まだこれからだ」と、前のめりになる政治サイドの動きに戸惑いもみられる。

財源で思惑交錯

 首里城再建を巡る財源の在り方を巡ってもさまざまな思惑が交錯する。玉城デニー知事は5日に上京した際、国の予算措置の在り方について「再建の分は再建の分として、県民生活や県の振興に資するための予算は、またそれはそれとして考えていただきたい」と述べ、沖縄関係予算とは別枠にするよう求めた。

 呼応するように公明の斉藤鉄夫幹事長は2日に首里城を視察した際、再建費用について「沖縄の予算に圧迫が加わらないようにすべきで、実際にそうなると思う」と語り、沖縄関係予算と別枠で計上するとの認識を示した。

 一方、対照的に自民党は慎重だ。6日に来県した自民党沖縄振興調査会の小渕優子会長は別枠での予算計上について「今の段階で申し上げるのは難しい」と述べるにとどめた。4日に来県した衛藤沖縄担当相も別枠について「決めているわけではない。軽々に言える段階ではない」と言及を避けた。

 沖縄振興予算の枠内で予算措置が実施された場合、他の事業費が削られることへの懸念の声が上がる。加えて、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設を巡り国と県の対立が続く中、将来的に首里城と基地のリンク論に対する警戒感も県政与党を中心に広がっている。

 県政与党幹部の一人は「与野党ともに首里城再建を政局にしてはいけないことは分かっている。ただ、数年後も同じ気持ちを共有できているかは未知数だ」と語った。

(吉田健一、知念征尚)
(おわり)