県内地銀3行の9月中間決算は琉銀が増収だったものの、利益については3行ともに減益となった。有価証券利息配当金がそろって減少し、減益要因の一つとなった。マイナス金利が続く中で、償還を迎えた国債の再投資先は限られている。リスクはないが金利の安い地方債や、市場に左右される株式などは国債に代わる安定的な収益源とはなっておらず、全国的にも地銀各行の有価証券利息配当金は減少傾向にある。
これに対し3行の融資量は旺盛な資金需要に応える形で堅調に増えている。日本銀行那覇支店の発表によると、9月の県内の貸出金の増加率は前年同月比5・1%増と、全国地銀平均(2・3%増)の倍以上のペースで推移している。
県内の企業業績の好調さや人口・世帯の増加が続いていることに支えられ、貸出金利回りの低下を融資量の拡大で補う形を県内地銀は維持できている。
一方で、今回の決算で琉銀の不良債権比率が前年同期比0・09ポイント上昇の1・73%と6年ぶりに上昇に転じた。沖銀は同0・17ポイント減の1・18%だったものの、貸倒実績率上昇などに伴い一般貸倒引当金繰入額は同3・3倍の6億2800万円となった。
ともに経営悪化した取引先に業種の偏りはないというが、県内全体では基幹産業の観光業で韓国客減少やホテル数の増加による競合激化の影響が現れている。旺盛だった不動産投資も、地価や建築単価の高騰により収益性が低下し、先行きは不透明だ。
今後の県内景況については意見が分かれるが、10月の消費税率引き上げ以降の消費や観光産業の動向は、金融機関の経営環境を占う上でも焦点となる。
こうした金融業界を取り巻く環境の変化に対応して安定した収益を維持するために、各行とも手数料収入などの役務利益の強化に取り組んでいる。
琉銀はM&Aなどの法人向けサービスとカード加盟店業務の収入が増加した。相続関連など個人向けサービスにも力を入れており、川上康頭取は「個人、法人、カード関連で役務を作れば有価証券が厳しい中でもやっていける」と見通す。
沖銀はキャッシュレス決済サービスの「おきぎんStarPay」の普及拡大に加え、県外に比べ低い県民の資産運用率を伸びしろと捉えている。山城正保頭取は「預かり資産の体制を整えることで、役務を伸ばすことができる」と語った。
海銀はシステム更新に当たっていた人材を手数料収入の強化に充てているが、上地英由頭取は「本業を度外視した収益の過度な多様化はするべきではない」と中小・小規模事業者への融資を最優先する方針だ。
(沖田有吾)