首里城の火災で「沖縄のアイデンティティーが焼失した」「沖縄の魂が失われた」との言葉が聞こえてきた。「自分たちの魂は自分たちで守る」という意味では、国にも基地にも依存しない「自己決定権」「自律経済」の確立のために、首里城の所有権も管理も県が担うべきだ。管理のノウハウを含めて行政の力量を高める機会にもなる。
県に移管された後の火災となると県の責任は当然問われる。しかし、出火原因がはっきりしていないのに管理者責任を問うのは本末転倒だ。まずは火災原因の徹底究明が先だ。その後に再発防止、防火体制を再建計画の中で検討すべきだ。考古学の専門家からは国宝級の文化財を観光・商業施設に保管するのは危険との指摘もあった。懸念された400点余の国宝級、重要文化財の焼失が現実となった。文化財の保管・展示の在り方を再考する契機とすべきだ。
首里城の再建支援を直ちに国へ要請した知事の行動については「全国が自然災害で大変なときに自分たちがヘマしたものについて再建支援を要請するのは虫がよすぎないか」という批判が出ている。出火原因も被害の全貌も不明な段階で、首里城の再建・復元が本当に必要かどうかという県民議論もなく、国に「再建要請」という話に違和感と警戒感を抱いた県民も少なくない。
ただ再建要請の背景を想像すると、首里城という宝物、沖縄アイデンティティーの喪失というショッキングな事態に、右往左往し「とりあえず再建・復興要請」という形での政府への要請となった。今後、国の支援については県の議論の中で再検討されるだろう。火災直後の混乱した状態での行動とは違う、冷静な行動が出るのではないか。
辺野古の移設を巡り国と対立している中で、首里城再建への支援が政治利用される懸念はある。「首里城再建を支援してあげた」と交換条件を出されないように、しっかりと線を引くことが大事だ。
辺野古の状況を見れば現在の安倍内閣は、民意を無視して建設を強行しているとの印象が強い。だからこそ「沖縄のアイデンティティー」と言うのであれば、国に横やりを入れられないように「沖縄の魂」は自分たちで作るべきだ。国に頼らなくてもできるような力を県民は持っているし、そういう気持ちも一つになってきている。クラウドファンディングや心ある国内外のサポートもある。
安倍首相も政治利用を考えていないと信じたいが、これまでも辺野古移設に関して県民に寄り添ったことはないし、丁寧に説明もしていない。政府は、安倍政権の言っている言葉を素直に受け取れなくなっている県民の心に寄り添ってほしい。 (談)