2006年から首里城の漆(うるし)塗り替え作業などに携わった県指定無形文化財保持者(琉球漆器)の諸見由則さん(59)は16日、浦添市美術館で塗り替え作業の様子や難しさなどについて紹介した。首里城正殿の漆の塗り替え作業は継続中で12月に終える予定だったと明かし、火災に「がっかりした。本当に残念だ」と肩を落とした。その上で「再建計画は決まっていないと思うが、元の立派な首里城を取り戻したい」と思いを語った。
同美術館では1日から17日まで諸見さんの展示会を開催している。16日のギャラリートークには約35人が訪れた。
諸見さんによると、首里城の漆の塗り替えは元々の塗装や下地のはぎ落としから始まり、何段階もの手順で漆を塗り重ねていった。壁面は28、柱は43、扁額(へんがく)は39の工程を重ねた。
漆は湿度60%程度が適しており水分がある状態の方が乾きやすいという。諸見さんは「内部はエアコンで調整できるが外側はできない。塗った日に乾かさなければならず、風が強かったりスコールが多かったりする天候での作業は大変だった」と振り返った。
10月31日は、知人の電話で首里城火災を知り、午前3時ごろには龍潭付近に駆け付けた。「火はどうしようもない。今後どうするかということを考えた」と話す諸見さん。「漆は大量に使うが、材料は購入すればある。早いうちに再建した方がいいと思うが何も決まっていない。技術者は待つだけだ」と話した。
諸見さんの首里城での作業を見たことがあるという彫刻師の仲宗根正廣さん(66)は「丁寧な作業で驚いた。諸見さんはデータも細かく残しているので前向きだ。ぜひ再建の作業にも関わってほしい」と話した。