子どものころから「自分が嫌い」 摂食障害、うつ症状に… 彼女を救ったものは? 〈シンポ「引きこもりのホンネ」当事者語る〉中


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
「ダンスをしている時が一番解放されている」と語りしなやかに踊る大城有澄佳さん=本島南部

 当事者が語る催し「不登校・引きこもりのホンネ」(アソシア主催)を前に登壇者に詳しく語ってもらうインタビュー企画第2回は、引きこもりや障がいがある人の就労支援を行うアソシアの卒業生で、摂食障害やうつを経験した大城有澄佳さん(22)。「ダンスがあるから頑張れる」と好きなものの大きさを訴える。

 ―どんな子どもだったか。

 「常に漠然と自分が嫌いだった。『自分を好きになろう』といった学校講演があるが、無理としか思えない。感想文を書くのも苦痛で毎回『感動した』などありきたりの文を書いた。成績は良く、代表あいさつをすることも多かった。講演の感想を言う時は、話の熱の入り方が変わる部分や口調が強くなる部分を引用する。うまくまとめることはできるが、繰り返すうちに自分の考えや言いたいことが分からなくなった」

 ―摂食障害は。

 「標準体形だったが、太っているというコンプレックスが大きかった。中3の冬、先生が糖質ダイエットに成功したと聞き、やってみたら体重が減り、ダイエットにのめり込んだ。食事は生野菜、ワカメやキノコのスープと納豆。もともと食べることに興味がなく、他の物を食べたいとも思わなかった。通学に片道1時間以上歩くなどして半年で20キロほど落とし、高1の夏休みには29キロになった」

 ―命に関わるレベルだ。

 「生理が止まり髪も抜けたが、自分では満足して活発に生活していた。検査すると内臓がぼろぼろで、無理やり入院させられた。太りたくないのに24時間ベッドに拘束されて経管栄養で太らされた。携帯電話はもちろん本もテレビも禁止で、寝返りも打てずトイレも室内。ものすごくしんどかったが体重が増えなければ退院できない。出たい一心で増やしたが気持ちは何も変わらない。6カ月半で退院した後には、負けてしまった絶望感があった」

 ―退院後の通学は。

 「冬の制服を着るのが楽しみで3月に復学した。でも半年たてばクラスの雰囲気は変わる。適応できず行けなくなった。単位を取るために2年の秋からは適応指導教室や別室登校をした。勉強は楽しく友達との仲も悪くなかった。教室という空間がきつかった」

 「痩せたいが二度と入院したくないという葛藤で自分を制御できなくなり、過食になった。食べてしまう自分への嫌悪感でいっぱいで体重も増える。本当にしんどかった。うつ症状が出て入院もした」

 ―支えになったものは。

 「小さな頃から踊るのが好きだった。いつも少し離れたところで自分を見ている感覚があるが、踊っている時には統合され、考えや感情を整理できる。好きなことは武器。ダンスがあるから頑張れる。ずっと参加している現代版組踊でのつながりも励みになった。今は過食もなく良い状態で、バイトをしようと初めての履歴書を書いている」

 「混乱すると、踊るかシャットダウンをする。何かを頑張るために他を全部オフにする時間が必要だ。そうと分かってから、頑張れることが増えた。その時間を引きこもりと言われ、否定されるのはきつい」
 (聞き手・黒田華)

   ◇     ◇

 「不登校・引きこもりのホンネ」は12月1日午後1時半からイオンモール沖縄ライカムで。前売り3千円。購入、問い合わせはアソシア(電話)098(926)5175。