「何としても残したい」“消滅”の危機だった沖縄定番の箸が再び食卓に! 一時生産中止も就労センターが製造へ


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 県外メーカーの廃業によって生産中止になっていた「ウメーシ」と呼ばれる沖縄定番の赤色と黄色の箸が、県内で生産される見通しとなった。那覇市内の就労支援センターが製造を請け負い、23日に試作品作りがスタート。12月17日には“新生ウメーシ”が完成する見込みだ。卸元のカネナガ商事(那覇市壺屋)の田川信次さんは「来春には取引業者への発送と店頭販売を始めたい」と話している。

沖縄そば店などで親しまれている箸「ウメーシ」=2019年7月

 ウメーシは商品名「竹塗箸」という竹製の箸で、県内で流通してきた。しかし、6月に製造元の竹材加工業「中西竹材工業」(鹿児島県薩摩川内市)が廃業したことで生産中止に追い込まれた。

 沖縄そば店や食堂などで使われ県民に親しまれてきた「沖縄の定番」の苦境は、本紙や複数のメディアが報じ、惜しむ声が上がっていた。そんな沖縄名物のピンチに立ち上がったのは、那覇市繁多川の就労支援センター「心輪(しんわ)」(宮良仁代表)だ。

 復活を期待する取引先からの声を受け、製造を請け負う業者を探していたカネナガ商事の田川さん。店のある壺屋周辺で野菜の移動販売に取り組んでいた同センターの宮良代表と知り合い、協力を呼び掛けた。

ウメーシの試作品作りに励む就労支援センター心輪の宮良仁代表(右手前)とカネナガ商事の田川信次さん(右奥)ら=23日、那覇市繁多川

 宮良代表は「ウメーシがなくなると聞いて県民として寂しい気持ちが強く、話を頂いて快諾した」と明かす。田川さんは「何としてもウメーシを残したい一心だった」と振り返る。23日には、心輪の作業所で試作品の箸に黄色の塗料を塗り付ける作業を行った。12月17日までに試作品を完成させる予定だ。

 「ここまでこぎ着けるのにも紆余(うよ)曲折があった」とかみしめる田川さん。オリジナルに近い色調で安全性を最重要視した塗料を探し「赤ちゃんが口に入れても安心で色合いも近い塗料がようやく見つかった」。中西竹材工業からは、作業台などを譲り受けた。

 今後は心輪で社会復帰を目指す利用者15人が作業に当たり、「まずは月に300膳、ゆくゆくは1500膳を製造できるようにしたい」(宮良代表)という。心輪のスタッフとともに試作品作りに励んだ田川さんは「沖縄のシンボルだった首里城が火災に遭い、もうひとつのシンボルのウメーシまで消えさせるわけにはいかない。県民の励みになるように早く食卓に届けたい」と力を込めた。(安里洋輔)