「被害者特定せず、事情聴取もない」パワハラ懲戒の取り消しを裁決 県人事委員会が島尻消防に


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島尻消防組合消防本部

 【南部】島尻消防組合消防本部の男性司令補(50)が職場内での「パワハラ」などを理由に受けた懲戒減給処分の取り消しを求め審査請求を行い、県人事委員会が男性への処分取り消しを同組合に命じる裁決をしたことが26日分かった。県人事委は「同組合は被害者とされる者を特定もせず、従って事情聴取などを行っていない」などと指摘し、調査が尽くされていない中での処分だとして取り消しの裁決をした。

 島尻消防は2018年3月9日、当時具志頭出張所の第2警備係長だった男性に対し、職員に実施したアンケート調査結果や、男性から他職員に送られたメールの文面などを根拠に「職場内でのパワハラ」「脅迫メール」があったと主張。出動体制で「現場指揮における内部規定違反」があったなどとして、6カ月間・月額10分の1の減給処分を下した。男性は同月20日、県人事委に不利益処分に関する審査請求を提出した。

 県人事委はパワハラに関して、島尻消防側が被害者とされる人物を特定せず、事情聴取もなされていない点を指摘。内部規定違反についても「懲戒処分に付さなければならないほど重大な違法性のある警防規定違反および職責の放棄があったとまでは認めがたい」とした上で「本件処分に係る処分事由のいずれも認めることはできず、本件処分は取り消しを免れない」と裁決した。

 島尻消防の屋比久学消防司令長は「裁決に関しては真摯(しんし)に受け止める。現在、再審査するかどうかも含めて検討している」と話した。同消防管理者の瑞慶覧長敏南城市長は「裁決の内容を真摯に受け止め、今後このような事例が出ないようしっかり対処していく」とコメントした。
 (嘉数陽)