
石垣市議会の調査特別委員会で廃止を求めることが賛成多数で決まった自治基本条例は、住民自治に基づく基本原則を位置付けており「自治体の憲法」とも呼ばれている。同市の市自治基本条例に関する調査特別委員会は今年3月に設置され、これまで5回の議論を重ねてきた。委員からは市民の定義や制定に至った過程、条例の理念などを疑問視する指摘があり、廃止要求の決定に至ったという。識者は「条例制定を目指す自治体に反対の陳情が出される事例は把握しているが、制定された自治体に廃止を働き掛ける事例は聞いたことがない。自治の否定だ」と批判する。
自治基本条例は2001年4月に北海道ニセコ町が全国で初めて施行した。行政の施策に市民の声を取り入れることなどを理念に盛り込んでいる。NPO法人公共政策研究所によると、ニセコ町での制定を皮切りに、今年8月までに、全国377自治体で同趣旨の条例が施行されている。県内では石垣市のほか読谷村で自治基本条例、西原、南風原の両町でまちづくり基本条例が施行されている。
水澤雅貴NPO法人公共政策研究所理事長は、石垣市議会の調査特別委の決定について「石垣市の条例には社会情勢の変化など、市民の声を受けて、条例を見直す規定も設けられており、廃止要求は唐突の印象が否めない」と指摘した。
その上で「9条3項は市議会は意思決定の過程を市民に明らかにしなければならないと定めている。議会は議論の在り方や内容を市民に説明する義務がある。条例を順守する義務を負う議会が自治を否定していることになる」と批判した。