切り口の斬新さにまず脱帽! 年末とくれば忠臣蔵。定番の主君のあだ討ち物語に幾度も涙したものだ。その忠臣蔵を、“討ち入りまでの予算計画”の視点から描いたのが本作。
お家没落から2年近くの月日を要した討ち入りの日まで、会議帳簿が残されているというのも驚きだが、勘定方の金の工面や予算設定の巧みさにはうなるしかない。勘定方と戦担当の意見の違いは、今の世の現場と企画のぼやき合いにも似て身につまされる。
使える予算は9500万円。生活費や食費に家賃、江戸までの往復旅費、討ち入りのための武具の購入等、金はどんどん減るばかり。節約に苦心する者、自分の金じゃないとばかりに無駄遣いする者、これまた現実社会を見るようで苦笑。
裏切り者や逃げ腰侍を切り捨てながら、はてさて、大石内蔵助率いる四十七士の面々は、無事に決算できるのか。決しておちゃらけている訳ではない、必死のあだ討ちプロジェクト。
泣き笑いしながら、何度もうなずくこと必至だ。
監督は中村義洋。
(スターシアターズ・榮慶子)