経済

「はいたいコラム」 旅しないとわからないこと

 島んちゅのみなさん、はいた~い! 連載は今回で100回目となり、年内をもって卒業することになりました。2015年の夏、琉球新報×日本農業新聞×JAおきなわによるシンポジウムに招いていただいたことをきっかけに、長い間のご愛顧ありがとうございます。あの大会の翌日、初めて訪ねた辺野古が忘れられません。

 座り込みテントの前の立て札には、「4093日」と書かれていました。11年3カ月という年月を反対運動に捧げてきた人が、目の前に静かに座っていました。その人、田仲さんは勤めの傍ら運動を続け、出身地の埼玉から移住して本格的に関わっておられました。

 テントには、旅行客から修学旅行生まで訪問者が1日に70~80人に及ぶので、そういう人たちに辺野古の海の現状、課題、環境について説明しているとのことでした。

 漁業や島民の暮らしへの影響から、サンゴ礁、野生のジュゴンの餌場環境や国際的な評価まで、その解説がまるで学芸員さんのようにわかりやすく整理されていたので、わたしは、そうか「座り込み」というのは、抗議行動と監視だけでなく、最前線の情報を発信する拠点になっているのだと知りました。

 ニュースで何度も見ていた辺野古の現場は、過激で怒りと罵声に満ちていましたが、実際の運動家はむしろ温厚で知的でした。大浦湾に浮かぶカヤック隊十数人の様子も静かな海そのものであり、抗議行動という言葉の強さからすると、目にした光景があまりに静かだったのでかえって印象に残っています。

 旅をするということは、現場取材と同じです。ジャーナリズム(journalism)とジャーニー(Journey)の語源は一つ。行ってみないと本当のことはわからないのでした。

 メディアのどんなインパクトのある映像よりも、どんな克明な記事よりも、その地を訪ねて感じた風やにおいや人の温(ぬく)もりは、旅人とその土地とを結びつけます。心や肌で感じる目に見えないものこそが親しみを生み、理解や愛着、共感を育みます。

 美しい景観や食べ物、沖縄の魅力は数えきれませんが、もっとどうしようもなく人の心を揺さぶるのは、島に生きる人々の姿です。物ではなく、人でしか人は呼べないのです。

(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。

(第1、3日曜掲載)



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