〈30〉口から しーら いんどー 善玉菌群を増やす


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 沖縄の方言には、不思議な力が宿っています。私の外来は年配の方が多く、方言を使うことで生活習慣指導を柔らかい言葉で伝え、次の受診までしっかり心に残す効果を感じます。そんな沖縄の健康を守る方言に「口から しーら いんどー」があります。

 「口から入る食べ物が体を弱らせる」という意味です。食べ物、食べ方によって病気になることを伝える言葉です。おいしく、私たちをとりこにする「しーら(災難)」となる食べ物が現代は少なくありません。

 糖質、塩、脂質を多く含む食品だけでなく、植物油脂、ショートニング、マーガリンに含まれるトランス脂肪酸、腸内細菌に影響を与えるPH調整剤、ソルビン酸といった保存料など、「しーら」となるさまざまな化学物質が、加工食品には含まれています。

 医学の進歩によって、腸内細菌叢(そう)が健康に関与することが明らかになってきました。あなたの体調不良は、食事や生活習慣のため腸内細菌叢が乱れたことが原因かもしれません。腸内細菌叢に含まれる善玉菌群、悪玉菌群、日和見菌群のうち善玉菌群を助け、悪玉菌群が増えない食生活に取り組むことが大切です。

 善玉菌群を助けるには(1)食物繊維を十分に取る(野菜、果物、海藻で1日350グラム)(2)ヨーグルト、納豆、みそ、米こうじ、ぬか漬けなど発酵食品を取る(3)おなかを温める(腸内細菌の適温は36~37度)。冷えたり、冷たい物を取り過ぎたりしておなかの調子が悪くなるのは、腸内細菌叢のバランスが乱れるためと考えられます。逆におなかの調子が悪い時に、湯たんぽなどでおなかを温めると回復が早くなることもあります。

 食物繊維不足、砂糖・飽和脂肪酸・タンパク質等の摂取過剰、加工食品・添加物を多く取る食事は腸内細菌叢の悪玉菌群を増やし、肥満、肝・筋肉等の臓器への脂肪蓄積、腎機能障害等を引き起こします。

 腸内細菌叢が乱れて善玉菌群が減り、悪玉菌群が優勢になると、便秘や下痢、あるいは便やおならが臭くなるなど、自分でも感じ取れる症状が出ます。日々の排せつ物を確認することは「しーら」が口から入っていないか判断するのにとても大切です。

(石川清和、今帰仁診療所 内科)