泡盛条例から「乾杯」を外すわけとは… 沖縄県議会、文化の振興に主眼


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「県泡盛の文化の振興に関する条例」の素案を説明する条例検討会の(前列左から)瀬長美佐雄氏(共産)、大城一馬氏(社民・社大・結)、山川典二氏(沖縄・自民)、大城憲幸氏(維新の会)=5日、那覇市泉崎の県議会

 県酒造組合など県内13団体が提出した「『琉球泡盛で乾杯を推進する条例』の制定を求める陳情」を採択している県議会経済労働委員会(瑞慶覧功委員長)は5日、「県泡盛の文化の振興に関する条例」として制定作業を進める方針を固めた。同様の「乾杯」条例を制定している他府県の事例を調査した結果、出荷量増加の効果がほぼ見られないことなどから、「泡盛で乾杯を推進」ではなく「泡盛の文化の振興」に主眼を置く形で素案をまとめた。

 年明けの県議会2月定例会に議員提案で提出する方針で、12月中にも素案に対するパブリックコメント(意見公募)を開始するなど、広く意見を集めた上で最終的な条例案をまとめる。13日開催の経労委には陳情者の県酒造組合や県泡盛同好会の会長らを参考人として招致し、素案に対する意見を求める。

 委員会に所属する議員でつくる条例検討会の調査によると、いわゆる乾杯条例を制定している全国11県のうち、条例制定後に出荷量が増加したのは1県、横ばいが4県、減少が4県、その他が2県だった。

 乾杯条例を制定しても泡盛の出荷量増加が見込みにくいことに加え、アルコール依存症や未成年飲酒、飲酒運転などの問題も考慮し、条文から「乾杯」の文言は外した。

 条例検討会の委員を務めた大城一馬氏(社民・社大・結)は、条例制定の目的は泡盛の振興や出荷量の増加であり、乾杯はあくまで手段の一つだと説明。「泡盛文化を振興する条例をつくり、実際上の効果がある条文を入れることが泡盛の価値を高め、盛り上げる上で効果的だと考えた」と述べた。

 条例の素案では泡盛が600年の歴史を持つ沖縄の文化だとし、発展させ次代へ引き継ぐ必要性を強調。県の責務として泡盛の文化の振興に関する施策を策定し、必要な財政措置を講ずることなどを定めている。県民、事業者、研究機関などにも泡盛文化の振興に関する役割を果たすことを努力義務として求める。