2020年度の国防権限法で、初めて有機フッ素化合物(PFAS)汚染に対応する条項が盛り込まれた。米国内での汚染の広がりや深刻度に反する米政府の遅すぎる対応に市民や専門家が粘り強く取り組んできた成果である。しかし最終的に決定された国防権限法は、当初の案からスーパーファンド法での有害物質指定など重要な条項が削減され、政治的な妥協の産物となり、関係市民や環境NGO、議員は落胆を示している。
しかし、それでも連邦議会が緊急性を必要とする重要な問題としてPFAS問題を法制化したこと、また沖縄でのPFAS問題が、まさに米国と同時進行で起きている問題であることを認識すべきだ。それを活用して沖縄側は戦略を立てる必要がある。
私たち市民もそれを意識し、米国の活動家と連携し、連邦会議のヒアリングに沖縄のPFAS問題を書簡で訴えてきた。削減された条項はあるものの、24年10月以降のPFASを含む泡消火剤使用禁止、制御不可能な泡消火剤の放出の即時の禁止、訓練場での使用禁止、泡消火剤廃棄処分手続き、PFOS/PFOAで汚染された農業用水の対処などの条項は生きている。
沖縄県や関係市町村などはこれらの関連条項を精査し、各条項がどう沖縄と関係するかを検討し、日米政府への交渉や要請の裏付けとして活用すべきであろう。情報を持って交渉することが「手ごわい交渉相手」として認識される第一歩である。日米地位協定や合同委員会の壁を超えて行動する機会として捉えることが必要だ。