「はいたいコラム」 美しい島をつくるのは


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 島んちゅのみなさん、はいた~い! いよいよ最終回。4年間ご愛読いただき、にふぇーでーびる。最後にお伝えしたいのは、沖縄の未来への希望です。2019年の訪日外国人客は3300万人に達する見込みで、さらに10年後、政府は6000万人達成を掲げています。

 県はそのうち1200万人を目指していますが、そこで求められるのは、量か質かを問う観光マネジメント。タイトルも衝撃的な、「観光亡国論」の著者、アレックス・カーさんの講演を聴きました。

 LCC(格安航空会社)が世界を席巻し、14億人が外国へ旅する時代、名だたる観光地でオーバーツーリズムが深刻化しています。ベネツィア、バルセロナなどの人気都市や、中国の歴史ある村では、日帰り客に入村料を取り、大型客船は入港を禁止するなど、規制策を講じています。

 国内では、お城ブームによる観光客増加で、大型バス駐車場を整備した結果、客の動線が変わり、商店街のにぎわいが途絶えた城下町が紹介されました。こうした観光“公害”は、地元にお金(ドル)を落とさない“ゼロドルツーリズム”と呼ばれ、地元住民にとっても、せっかく訪ねたはずの客側にとっても、悲劇です。

 一方、アレックスさんは、古民家再生の第一人者でもあり、徳島県の秘境、祖谷で茅葺(かやぶき)屋根の宿を営んでいます。伝統的な日本の暮らしに関心を持つ外国客が多く、宿泊客3人が地元に落とす金額と、大型バス客70人が落とす平均額は同じだそうです。旅人の性質を金額だけで比べることはできませんが、どちらがその土地に深い愛着や思い出を持ち、また来てくれるかは、想像できるでしょう。

 首里城の焼失で大きな傷を受けた沖縄ですが、先ごろ、立ち入り区域の拡大に伴い、「首里城復興モデルコース」を策定したニュースがありました。悲しみは癒(い)えませんが、これからの時代、どんな沖縄を見てもらい、旅人とどんな関係を築くのか。建設的に考えるチャンスかもしれません。

 日本中を歩いた民俗学者・柳田國男さんはこんな言葉を残しました。「美しい村は、はじめからあったわけではない。村を美しくしようとする人がいて初めて、村は美しくなるのである」

 島んちゅの宝は、島人の心の美しさの投影です。新しい年が希望に満ちたものになることを祈っています。

(おわり)
(フリーアナウンサー・農業ジャーナリスト)

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小谷あゆみ(こたに・あゆみ) 農業ジャーナリスト、フリーアナウンサー。兵庫県生まれ・高知県育ち。NHK介護百人一首司会。介護・福祉、食・農業をテーマに講演などで活躍。野菜を作るベジアナとして農の多様性を提唱、全国の農村を回る。