新基地建設の前提崩れる 政府、普天間固定化を追認 業者は13年にも疑問


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、政府が見積もる埋め立て工程10年程度に施設整備を合わせれば、完成まで13年かかる。防衛省は工期について「5年」としてきた。工期が大幅にずれ込むことで政府が強調してきた「普天間の一日も早い危険性除去」(菅義偉官房長官)という新基地建設の前提が崩れた形だ。

 報道を受け、来県中にコメントを求められた菅氏は22日、「現時点において内容について答えるのは困難だ」と事実関係を明らかにしなかった。「普天間飛行場の固定化は絶対避けなければならない」と工事の強行を正当化してきた菅氏だが、所属ヘリの部品落下事故などが相次ぐ普天間飛行場の固定化を事実上、追認する矛盾が露呈した。

■「指摘通り」

 「5年では完成不可能だということは分かっていたはずだ。県が指摘した通りだった」。県幹部の一人は語気を強めた。

 政府が当初の試算や説明を覆すのは初めてではない。防衛省は2013年に提出した公有水面埋め立て承認願書の添付書面で、埋め立て工事に必要な全体の事業費として、5年の工期で2405億4千万円としていた。

 だが、現場の工事は契約の変更などで工事費が膨らんだ。14年度に実施予定だった仮設桟橋などを設置する準備工事の契約は当初59億6千万円だったが、その後、契約は10回変更され、2倍以上の約139億7千万円に膨らんだ。さらに辺野古崎の工区の埋め立て費用も契約変更で約42億円増加し、101億7300万円となるなど、当初の予定と実際の支出額に大きな開きが出ている。

 さらに県は大浦湾に軟弱地盤が存在することなどを指摘し、工期は少なくとも13年、事業費は2兆5500億円かかると試算したが、地質調査などを実施した政府は当初、軟弱地盤や活断層について認めないまま土砂投入を始めた。地盤改良の必要性を公にしたのは19年に入ってからだ。

■もっとかかる?

 防衛省は事業費について14年に「少なくとも3500億円以上」と説明してきたのみで総額を明示していない。地質改良工事でさらに工費が膨らむことは否定しておらず、完成の見通しが立たない基地建設に税金が際限なく投入される状況が続いている。

 工事に携わる業者の間では、政府が修正した「完成まで13年」より長引くとの見立てもある。関係者の一人は「13年で終わるか疑問だ。15~20年とみている」と話す。「民間事業なら工期は決まっているし、費用も抑えられる。辺野古は(長引くほど)業者としてはおいしい」と語った。

 工事関係者からも疑問の声が上がる中、河野太郎防衛相は23日の記者会見で「沖縄防衛局を中心に鋭意検討をしているところだ」と述べるにとどめた。

(松堂秀樹、関口琴乃、明真南斗)