【識者談話】政府は普天間の危険性放置 辺野古埋め立て10年で 星野英一・琉球大名誉教授


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 辺野古移設工事に10年もかかるというなら、それは「普天間飛行場の固定化」に他ならない。菅義偉官房長官が米軍普天間飛行場を名護市辺野古に移設する根拠としてきた「危険性の除去」が実現できないことが明らかになった。政府が危険性を放置していることになる。

 政府はこれまで、なぜ沖縄に米軍基地の負担を集中させてきたか、明確に説明してこなかった。米軍基地や新兵指導を含む訓練を他の地域が受け入れないことなど、沖縄に負担が集中してきた原因がさまざまな場所で指摘されてきた。沖縄の負担を分散することがほとんどできず、そうした疑問にも答えてこなかった政府が10年もかかる巨額の工事を「沖縄の負担軽減のため」と強調するのはしらじらしく感じる。

 日米両政府は在沖海兵隊の大部分をグアムに移転することで合意している。つまり日本政府はグアムに在沖海兵隊が移転するのを分かっていながら辺野古に新たな基地を造ろうとしており、整合性が問われているが、「丁寧な説明」は果たされていない。

 十分な説明によって政策を実現するのではなく、政府の方針に従わないなら予算を引き締めたり、反対運動を力でもって押さえ付けたり、金と力で反対を押さえ込もうとしている。国民の無関心をいいことに、沖縄に過度な基地負担を押し付けている。

 玉城デニー知事は「対話による解決」を求めている。ただ、「現行計画の変更はない」と結論が決まっていては対話はできない。負担軽減や移設工事の工期、予算、海兵隊の移転計画などさまざまな課題を話し合い、それによって計画変更の可能性もあるということを前提にしなければ話し合いの意味はない。政府は今こそ、県との対話を図るべきだ。

 (国際関係論)