日本の高い技術を世界に 国内初の航空機整備会社 始動から1年、南の島で見込まれる需要とは…


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プロペラ機の前に立つMROジャパンの整備士照屋寛季さん=那覇空港

 南の島で、空の安全を支える職人集団が動きだしている。航空機の機体整備を専門に担う会社「MROジャパン」が那覇空港で本格稼働して、2020年1月で1年。同種の会社は海外で一般的だが国内では初。日本の航空界が培った高い技術を世界に売り出せるか期待がかかる。

 ジェット機とプロペラ機の周りで、灰色のつなぎにヘルメット姿の整備士が、胴体やプロペラを入念にチェックしていた。那覇空港にある大小二つの真新しい格納庫は、沖縄県が航空関連産業の拡大を狙って建設。MROジャパンが専用で使っている。

 航空機整備は、毎日行う「ライン整備」と格納庫での「ドック整備」に大別される。

 従来、国内外の航空会社はいずれも自前で実施していたが、航空需要の拡大に伴い自前の整備だけでは追い付かなくなり、1990年代ごろから、長期間の点検、修理になるドック整備を一部外注するのが一般的に。こうした依頼を請け負う業態は、修理などを意味する英単語の頭文字を取った「MRO」と呼ばれ、香港やシンガポールの会社が世界的に知られた存在だ。

 MROジャパンは全日空グループが出資し、2015年に大阪(伊丹)空港で発足。格納庫完成を待ち那覇に移転し、本格的な業務を始めた。現状では全日空やピーチ・アビエーション、ソラシドエア、スターフライヤーの整備を受託。那覇空港はアジア各国と地理的に近い強みを生かし、国際物流の拠点となっており、今後は海外の航空会社から整備の依頼が入ると見込む。

 実際に作業に当たる整備士は全日空からの出向に加え、地元の若者を多く採用する。うるま市出身の照屋寛季さん(22)は工業高校に在学中、会社を知り、16年春に1期生として入社。実務訓練を経て秋から現場配属され、先輩から1対1で作業を学んだ。

 「多くの乗客を運ぶ飛行機は、ちょっとしたミスが大きな事故につながる」。仕事の厳しさを感じる一方、整備に携わった機体が格納庫を出て行く達成感は、何物にも代えがたい魅力だ。

 19年入社の4期生は愛知県や茨城県の学校出身者も。照屋さんは後輩に部品整理の仕方や、どの作業にどんな道具が必要かを指導することも増えた。

 「日本で唯一の会社。世界を代表する会社を目指すためにも、1期生として支えていきたい」