【記者解説】空前の公共工事、辺野古工費9300億円の内訳は…


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 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設を巡り、防衛省が総工費や工期を見直した試算を発表した。ただ、これまでの経緯を踏まえれば、今後も試算より費用が増え、工期もさらに延びる可能性は高い。特に約9300億円に膨れあがった総事業費は県内では前例がない規模とみられ、空前の公共工事となる。

 防衛省は2007年度から18年度までに、既に辺野古の工事に1471億円を支出した。19年度予算では約707億円(契約ベース)を計上している。単純に足し合わせても、同省が14年の時点で少なくとも「3500億円」かかるとした総事業費の半分を既に超えていた。

 今回、防衛省が改めた総事業費9300億円のうち、軟弱地盤にかかる経費として計上したのは約1千億円だ。地盤改良を理由に、それ以外の部分の経費も工費を押し上げる要因になっている実態があり、今後も膨らむ公算は大きい。

 危険性除去のための米軍普天間飛行場の早期返還は遠のいているが、辺野古を「唯一の解決策」とする政府の姿勢は変わらず、他の選択肢を検討する気配はない。防衛省関係者は、これから別の候補地を探す政治コストを踏まえれば、今回示された12年の工程は「決して長いスパンではない」と言い切る。試算が膨らむほど、県内の反発を顧みずに政府が辺野古を押し通す姿勢は前のめりになっている。
 (當山幸都)