自治体、住民の政治参画をけん制 在り方厳しく問われた年〈沖縄この1年・2019〉5


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市民提訴の議案について「今議会での提案は考えていない」と述べる下地敏彦宮古島市長=9月24日、宮古島市議会

 自治体や議会が住民の政治参画や行政チェックをけん制する動きが先島で続いた。住民の批判も巻き上がり、自治の在り方が厳しく問われた。

 宮古島市では2014年度に実施された不法投棄ごみ撤去事業が違法だとして市民6人が下地敏彦市長を相手に起こした住民訴訟を巡り、市が損害賠償を求めた原告市民を名誉毀損(きそん)で提訴する議案を市議会9月定例会に提案した。原告らが判決後も市の違法性を訴え、「市の名誉を毀損した」というのが提訴の理由だった。

 公金を使って市民を提訴するという市側の判断に対し「住民へのどう喝だ」「スラップ訴訟ではないか」などと県内外から批判が相次いだ。市議会の与党議員らも慎重姿勢を見せ、混乱が続いた。

 その後、下地市長は「内容を精査する必要がある」として議案を一時撤回。議会閉会前日には「(報道などを通して)市の考え方を伝えることができた」などと説明し、再提案しない考えを明らかにした。

 議案取り下げで騒動は終幕したものの、市側は「原告市民が市の名誉を毀損した」という認識は変えていない。今後の対応についても「(原告側の)行動を注視し対処する」としており、必ずしも完全撤回とは言えない状況だ。

 石垣市では、市議会与党の自民会派議員らが、市民の政治参画の推進やまちづくりの在り方などを掲げる自治基本条例の廃止条例案を市議会12月定例会に提出した。可決されれば「自治体の憲法」とも称される自治基本条例が全国で初めて廃止される事態だった。

 廃止を迫る議員らは住民登録していない人まで含む条例上の「市民」の定義を問題視。さらには「理念を条例で制定する必要がない」とも主張した。野党は廃止提案に強く反発した。市民団体が同条例の規定を市平得大俣への陸上自衛隊配備計画の賛否を問う住民投票の根拠にしていることから「住民投票つぶし」との声が市民から相次いだ。

 結局、与党内の非自民系議員の理解も得られず廃止条例案は否決された。ただ自民会派は今後、新条例案を提案する考えを示しており、自治基本条例を巡る混乱が再び起きる可能性もある。
 (おわり)