売り手市場で新卒内定率が過去最高に それでも残る沖縄の就職活動の課題


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 沖縄労働局(福味恵局長)は10日、県内の新規高卒者と大卒者の就職内定率(19年11月末時点)を発表した。高卒者が64・1%(前年同月比0・3ポイント増)、大卒者が59・7%(同0・7ポイント増)で、いずれも過去最高を更新した。だが、全国の新規高卒者の内定率は88%で県内とは20ポイント以上の差がある。新規大卒者の内定率は、厚生労働省と沖縄労働局の調査方法が異なり、単純比較はできないが、全国76・8%(19年10月1日時点)で17・1ポイントの差がある。

高卒、全国より20ポイント低く

 福味局長は「県や教育委員会、各高校大学と連携し未内定者の就職支援に力を入れたい」と述べた。

 新規高卒者の就職希望者数は2377人(前年同月比3・3ポイント増)。県内での内定率は59・5%(同2・0ポイント増)、県外での内定率は74・8%(同2・6ポイント減)だった。

 新規大卒者の就職希望者数は1869人(前年同月比25・9ポイント減)。県内での内定率は57・9%(同2・2ポイント増)、県外での内定率は62・7%(同3・8ポイント減)となった。

 同局が実施した新規大卒者に関する調査は、同局管内の大学が学生からの報告で把握している内定状況を同局が取りまとめた。

 過去最高値を記録した理由について福味局長は「雇用情勢が好調だ。企業は早く求人を出すなどの対応を心掛けている。また、労働局も関係機関と連携して職業ガイダンスなどを行い、生徒に早めに就職活動をするよう声掛けした成果もあった」と分析した。

売り手市場 初動遅れも

 2020年3月に県内の高校や大学を卒業する学生の就職内定率(19年11月末時点)が過去最高を記録した背景には、人手不足や好景気など「就職売り手市場」がある。ただ全国の内定率と比較すると依然、差がある。

 就職内定率が全国に比べて低い理由について沖縄労働局は「企業が求人を出すのが遅く、生徒や学生も就職への意識が低い」と分析する。出だしの遅れは、「ミスマッチによる就職3年以内の離職や、県外への人材流出につながる」と懸念する。

 就職を希望する高校生の採用活動の解禁日は全国共通の9月16日。大学生の場合の解禁日は、会社説明会が3月1日、採用選考が6月1日だ。

 労働局は県内の就職活動の取り組み方について「卒業までに就職先を決めればいいと考える人が多い印象だ。採用活動の解禁日までに自己分析や企業研究などの準備ができていない人の割合が全国よりも多く、全体的に就職活動の初動が遅い」と指摘している。
 仕事内容や社風を理解せずに入社すると、実際に働いたときにギャップを感じやすく、早期離職につながりかねない。

 仮に離職した場合、19年11月時点の県内の正社員求人倍率は0・63倍で、離職後に必ず正社員になれるとは限らない。労働条件の悪化や賃金格差が生まれる可能性もある。

 就職を希望する学生が自己分析や企業の情報収集を十分にせず、卒業後の一時的な就職先として企業を選ぶのは将来的にさまざまなリスクを伴う。学生優位の売り手市場に油断せず、採用活動の解禁日に合わせた早期の就職活動が必要だ。そのためにはハローワークや学校現場、家庭での就職支援も欠かせない。 (関口琴乃)