県体育協会の事業課に勤める岩崎宇信さん(44)=八重瀬町、静岡県出身=は、東京五輪・パラリンピックを目指す県勢アスリートにとって心強い応援団だ。2004年のアテネ五輪重量挙げ男子105キロ超級に出場したオリンピアン。現在は五輪・パラリンピックの代表枠獲得を狙う県勢の強化事業を担当している。自身の経験を基に「選手が練習に集中できる環境をつくりたい」と、今度は裏方として世界最高峰の舞台を見詰めている。
静岡県伊豆長岡町(現伊豆の国市)出身。高校1年で競技を始め、185センチの体格を武器に重量級で活躍し、県出身の平良朝順さん(60)が監督を務める強豪・法政大に進学した。29歳で迎えた04年、アトランタ、シドニーで五輪に出場した大学の先輩、吉本久也さん(46)=東村教育委員会職員=に全日本選手権でわずか2・5キロ差で競り勝ち、見事アテネの代表権を獲得。「世界一の力持ち」を決める最重量級で12位と健闘した。
重圧の中、体を酷使して目標にたどり着き「達成感があった」。第2の人生を考え、同年の国体後に引退。07年に朝順さんのいとこで、重量挙げ選手だった朝美さん(40)=現豊見城高重量挙げ部監督=と結婚し、沖縄へ移り住んだ。それまでも競技を通して多くの県関係者と交流があり「(移り住むことに)違和感はなかった」という。
「スポーツを通して子どもから大人まで携わり、お世話になった人たちに恩返しがしたい」と17年に県体協に就職。東京五輪、パラリンピックを目指す県勢選手に強化費用を補助する「2020東京オリンピック・パラリンピック選手輩出事業」を担当する。
時折、選手たちがあいさつで事務所に顔を出したり、活動報告の書類の書き方を聞くために電話をしたりしてくることがある。そんな時、岩崎さんは「あえて競技外の世間話をするようにしている」という。理由は「選手たちは普段から頑張っている。それ以外のことを考える時間も必要。負担を掛けたくないから」。一国の代表として、五輪を経験したからこそ分かる重圧がある。
仕事の傍ら、豊見城高重量挙げ部のコーチも担う。県内で日本代表の合宿があれば顔を出し「そこで学んだ練習を高校で活用することもある」と次世代の強化にも熱心だ。「周りに感謝し、応援したくなる人になりなさい」と人間性の育成にも気を配る。
東京五輪の開幕まで、あと半年。「重量挙げだけじゃなく、県勢にはいろんな種目で有望な選手がいる。諦めなければ五輪・パラリンピックにたどり着ける。応援したい」と頬を緩めた。
(長嶺真輝)