[日曜の風]管理貿易再び 最下位争いの行方は?


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 管理貿易。この言葉が新聞紙上に久々に登場している。懐かしい。

 1980年代、筆者がシンクタンクで米国経済を担当していた頃、この言葉がはやった。あの時、米国は自由貿易ではなく、公正貿易を目指すのだと言い出した。フリーはダメ。フェアでなくっちゃ。そして、米国は管理貿易を通じて公正貿易を実現する。この論法を振りかざして、あの時、米国が打って出た相手は日本であった。日本が、今の中国の立場に置かれていたのである。

 あの時代に、日本に管理貿易を迫ったのが、ロナルド・レーガン大統領(当時)だった。史上、最低級の米国大統領出現。誰もがそう信じて疑わなかった。ところが、どうか。トランプ親爺(おやじ)さんの行状を目の当たりにしている今、レーガン氏が結構上等だったように思えて来る。

 かくして、米大統領としての資格を巡って最下位争いを演じるこの二人。その両者が、いずれも管理貿易派だというのがなかなか面白い。管理貿易という言葉に厳密な定義があるわけではない。要は、貿易を自由放任状態にせず、その動きを管理することで公正さを確保するという考え方だ。

 当然、この場合の公正さは自国にとっての公正さだ。この観点から、レーガン時代の米国は日本に対して対米輸出数量に関する「自主規制」を求めて来た。鉄鋼、自動車、カラー・テレビ、半導体。日本の対米主力輸出品目が、次々と自主規制要求にさらされた。日本側がこれらの要求にそれなりに対応する中で、状況は次第に鎮静化に向かった。

 あの時と今では、何が同じか。何が違うか。同じなのは、管理貿易のおかげで米国産業が潤っているわけではないという点だ。違うのは、あの時の日本の対米輸出の減り方に比べて、今回の中国の対米輸出の減り方がぐっと大きいということだ。それだけ、米国経済の対中輸入依存度が高くなっていたわけである。

 こうしてみれば、管理貿易は、レーガン時代にも増して、米国にとっての自滅効果を高めている。大統領としての最下位争いは、やっぱりトランプ氏の勝利に終わりそうである。

(浜矩子、同志社大大学院教授)