25年前に沖縄県と政府が争った米軍用地代理署名訴訟 訴状や答弁書を公開 県立図書館「後世への重要資料」


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 県立図書館(那覇市、平良朝治館長)で2019年12月から、1995~96年にかけて県と国との間で係争となった米軍用地の強制使用を巡る代理署名訴訟の訴状や答弁書、双方の準備書面の複写が閲覧可能となっている。県立芸大付属研究所共同研究員の仲村顕さん(46)がこのほど寄贈した。県立図書館が裁判資料を受け入れるのは異例で、担当者は「後世のための重要な資料と判断した」としている。

米軍用地代理署名訴訟の関係資料(県立図書館所蔵)

 当時、仲村さんは沖縄大学の学生だった。「県にとって大きな裁判で、過程と結果をその場で見聞きしたかった」と法廷に通った。県立図書館に寄贈した資料は、その際に裁判所周辺で販売していた物を購入して手に入れた。資料の表紙には「沖縄県知事の『代理署名拒否』裁判を支援する市民・大学人の会」が編集・発行したとの記載がある。

 寄贈された資料には、大田昌秀知事=当時=の最高裁での意見陳述要旨もある。大田氏は「(米軍基地があることで)産業の振興はおろか、街づくりそのものができない」「なぜ沖縄だけが過重な負担を背負わなければいけないのか」「日本の主権と民主主義が問われる日本全体の問題ではないか」など、現在も繰り返される言葉が発せられていることを確認できる。

 県立図書館の担当者は「前例がないので受け入れるかどうか悩んだが、県が関わっている大きな訴訟なので重要な資料と判断した」と説明。書面にある個人情報や印影は伏せてある。今後、裁判資料の受け入れについては「個別の判断になる」とした。

仲村顕さん

 仲村さんは、裁判所が代理署名訴訟の裁判資料を破棄したという報道があったことに触れ「多くの人が資料を利用しやすくなれば」と期待した。

 同訴訟で県側代理人を務めた池宮城紀夫弁護士は「(仲村さんが)歴史的な感覚を持ち、資料の重要性を認識していたのだろう。学問的にも大きな貢献をした」と語った。

 裁判資料は貸し出し禁止で、県立図書館で申請すれば閲覧できる。

(安富智希)