[日曜の風]表面だけ真似てもね 安倍首相と岸氏


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 「岸信介は日本の首相としてアメリカの大統領とゴルフをした最初の人物でした。2番目はといいますと、私でありまして。私はもう4回、トランプ大統領とゴルフをともにいたしました。これも日米同盟深化の証拠であろうと、口にはいたしません、心で思っているだけでありますが……。」

 これは1月19日、安倍晋三首相が日米安全保障条約60周年記念レセプションで語った言葉だ。安倍首相は祖父である岸元総理大臣を特別に意識している。岸の娘、安倍首相の母の洋子さんの思い入れなどもあるのかもしれない。

 けど、意識するのは表面だけか? 1月22日発売の『日刊ゲンダイ』、ジャーナリストの立岩洋一郎さんの連載コラム『ファクトチェック・ニッポン!』の中に面白いことが書かれていた。

 1957年当時、岸総理がアメリカのダレス米国務長官に伝えたこと。『それは「琉球の問題について2点挙げたい」として始まった。』

 『《前略》(琉球の)居住者は日本人であること。それ故、この問題は琉球の問題だけの話ではなく日本人の問題であること』

 『もし土地が軍事目的で求められるとなると、代わりの土地を見つけるのが困難となる。琉球の人々の感情に配慮してもらいたい』

 当時、琉球は、アメリカの施政権下にあった。この国も主権を回復したばかりであった。そのことも踏まえ、立岩さんはこういう。

 『岸は、沖縄の問題は日本の問題だとして基地の拡充を進めるアメリカ政権を牽制している。(中略)では岸を尊敬してやまない安倍晋三総理はどうだろうか?』

 あたしは安倍首相は、日本国の総理の役目を果たしてないと思う。この国としての当然の意見もいえず、なにが総理だ。

 ちなみに今年度、日本が在日米軍に支払う「思いやり予算」は1974億円。同盟国の中、突出して高い。それでも安倍首相と4回ゴルフをしたトランプ大統領は、さらなる値上げを要求してきた。こちら側は、地位協定改定のちの字もいえてない。

(室井佑月、作家)