新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を受け、中国政府は人の往来を止めてでも封じ込めを図ろうとするが、観光を中心に経済への波及が大きくなっている。沖縄でも大型クルーズ船寄港中止やホテルで宿泊キャンセルが出るなど影響が広がる。日韓関係の悪化で韓国客が激減する中で、中国からの観光客の減少も懸念され、ホテル事業者から悲鳴が上がる。一方で沖縄はウイルスが海外から侵入する可能性も高いことから防疫態勢に気は抜けず、商業施設では消毒の徹底など対策に追われている。
恩納村のホテルでは26日から27日にかけて中国客のキャンセルが出ている。同ホテルでは昨年、韓国の野球チームのキャンプ中止で宿泊者が減少した。デモのあおりを受けて香港客も減少傾向にあるという。同ホテルの関係者は「韓国の影響と合わせて痛手は大きい。今後、台風が来たら今以上に大変なことになる」とため息をつく。
那覇市内のホテルの関係者も韓国客の減少に加えて中国客のキャンセルも相次いでいるというが、「沖縄は人気の旅行先でもあり、感染の可能性は否定できない。県内での感染者や国内で死者が出るともう終わりだ」と危機感を強める。
県ホテル協会の當山智士会長(かりゆし社長)は、春節の時期と重なっていることもあり、2月上旬にかけさらにキャンセルが増えると予想する。當山会長は「もし県内で発生が広がると、さらに大きな影響が出かねない。協会としてできる対策を講じたい」と気持ちを引き締める。
県ホテル旅館生活衛生同業組合の宮里一郎理事長は「今のところ大規模なキャンセルの話は聞いていないが、今後は確実に影響は出てくるだろう」と指摘する。韓国客に加えて中国客まで沖縄に来なくなれば、観光業界全体が大打撃を受けると感じている。
県は28日に観光関係者を集め、ツーリズム産業団体協議会を開いて今後の対応などを話し合うことを決めた。金融機関でも沖縄振興開発金融公庫が27日、新型肺炎の発生で影響を受けた事業者や、影響を受ける恐れのある事業者を対象に、各店に特別相談窓口を開設した。
中国客が多く訪れる県内の商業施設も対応に追われる。サンエーは大型店舗の化粧品やドラッグ関連商品の販売担当者にマスクの着用を推奨。イオン琉球は従業員の体温測定を実施して、体調管理を強化している。沖縄ディーエフエスは従業員のマスク着用やうがい、手洗いの徹底で感染拡大の防止に努めている。