国内で新型コロナウイルスの感染が拡大していることを受け、多くの観光客と接する沖縄県内の公共交通機関は感染防止のための対応に追われている。バスやタクシーでは運転手のマスク着用を進めるが、接客業のため顔を隠すことへの抵抗感もあるという。中国の団体旅行停止の影響から、観光バスでは予約のキャンセルも出ている。
クルーズ船の乗客に対応する機会が多い県内の観光バス会社は、感染防止に向けて運転手やバスガイドにマスクの着用を呼び掛けた。担当者は「観光バスは顔が見えるサービスなので、マスク着用は難しい部分がある」と頭を抱える。乗客に状況を説明し、乗務員のマスク着用の理解促進に努めている。一方、観光バスのキャンセルは5件ほどあった。
那覇バスでは運転手に対してマスク着用を許可する通知を出した。同社は外国人客を乗せる機会が少ないので強制ではないという。乗客と接する機会が多いバスガイドには通知を出していない。同社でも観光バスのキャンセルが発生している。別のバス会社の担当者は「中国人客のキャンセルは今後さらに増えるだろう。コロナウイルスが落ち着くまで中国人客は厳しいはずだ」と見通す。
県内タクシー大手の三和交通は各営業所で消毒液やマスクを準備するなど、感染防止に取り組む。同社は中国の決算アプリ「アリペイ」や「WeChat Pay」に対応しており、中国人客に人気が高く乗せる機会も多い。担当者は「1日貸し切りも行っているため、運転手にはこまめに車内の換気をするよう指導している」と話す。
県ハイヤー・タクシー協会の東江一成会長は「運転手の感染防止のためマスク着用を呼び掛けたいが、乗客の中には運転手のマスク着用をよく思わない人もいる。そのためマスク着用は運転手の判断に任せている」と説明する。県が感染防止のためのガイドラインを作成することも必要と感じている。東江会長は「国内で感染が広がれば、日本人客の旅行もキャンセルになるだろう。その場合、観光への影響は大きい」と不安視した。