労災による死傷者は半数以上が50歳以上 その背景にあるものは…


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 2019年に県内で起きた労働災害(休業4日以上)による死傷者1121人(速報値)のうち、50歳以上の労働災害が全体の約半数を占める581人に上ることが31日、沖縄労働局の調べで明らかになった。50歳以上の労災は年々増加傾向にあり、特に第3次産業の社会福祉施設で転倒や無理な動作による腰痛などの労働災害が増えている。

 同局は原因について「労働人口の高年齢化が考えられる。若手が集まらず、肉体労働を高年齢者がやらざるを得ない労働環境が背景にある」と分析している。

 例年、労働災害の確定値が出る4月までに100人余りの労災報告があることから、同局は19年の確定値が1200人を超える可能性があるとみている。労災が1200人を超えれば1989年以降最多となる見込みだ。

 高年齢者の労働災害が増える背景には体力的な問題もあるという。同局健康安全課の徳永景太産業安全専門官は「骨折は治療期間が長く、腰椎圧迫骨折など重傷になる場合もあり、転倒災害といっても軽く見てはいけない」と指摘する。

 転倒は床が水や油でぬれて滑ったり、1センチ程度の段差でもつま先が引っ掛かったりすることでけがにつながる。荷物で足元が見えない状態で階段を上り下りし踏み外す場合もある。社会福祉施設では、利用者をベッドから車いすに移乗する際など動作の反動や無理な動作で災害に遭いやすい。その他の業種でも、荷物を運ぶときにぎっくり腰になるなど腰痛の災害が多い。

 徳永専門官は「どの事業所も一人一人の労働者が多くの仕事を抱えて会社を支えている」と指摘し「疲れで集中力が低下し、安全に作業ができなくなると事故につながる危険性がある」と強調した。