新型コロナウイルス感染による肺炎拡大が世界経済にも影響を広げる中で、観光客の増加を背景に好調を続けてきた沖縄県経済にも大きな影を落としている。購買意欲が旺盛な中国客の来訪を見込んでいた春節休暇という書き入れ時に、千人単位の予約キャンセルが直撃した飲食店や観光事業者は苦境を訴えている。
那覇市や恩納村の県観光地で沖縄料理店「ちぬまん」を運営する沖縄観光開発では、来店客全体の3割程度をインバウンド(訪日観光客)が占める。同社の与那和正専務は「韓国客の減少もあって、1月の売り上げは5~10%程度落ち込んでいる。春節で前年並みに戻るかと見込んでいたが、予約のキャンセルで影響は相当大きい」と頭を抱える。
新型肺炎の影響が長引けば、沖縄は外国人が多く訪れる観光地というイメージから、国内客の旅行控えにまでつながることを懸念している。与那専務は「先が見えないことが怖い」と不安を口にした。
貸し切りバスで訪れる大型クルーズ船の団体客の姿も途絶え、国際通りは普段に比べて人通りも減っている。国際通りで複数の飲食店を展開する企業の担当者は「1月末以降に中国客2千人以上のキャンセルが出た。観光地を避けているのか、国内の団体客も一部でキャンセルが出ている」と声を落とした。
インバウンドの多い那覇市内のホテルは「韓国客に続き中国客も一気に入ってこなくなった。厳しい」と肩を落とす。稼働率確保のための値下げも検討しているという。
全国旅行業協会県支部の崎山喜孝支部長は「影響が長引くと死活問題になる。特に中国客を専門に受け入れている事業者は苦しい」と指摘する。
一方で、那覇市牧志のホテルパームロイヤルNAHAは国内客の宿泊が順調で、1月の客室稼働率は前年に比べて上昇した。高倉直久総支配人は「値下げをしても客足は戻らない。中長期的に値崩れしないように、リピーターになってもらえるサービスをしっかりしていく」と話した。同ホテルはマスクを商社に発注していて、調達でき次第宿泊客への無料配布を考えているという。
観光客の減少はスーパーや百貨店、土産品店など小売店舗の販売にも影響が及ぶ。県の2018年度の統計では中国人客の土産買い物費5万1481円と、全インバウンド平均の倍以上だ。小売業界の関係者は「中国人観光客が1割減ると、売り上げに相当な影響が出る」と指摘する。
イオン琉球では1月後半から中国客の減少が見られ、昨年の春節と比較し免税売り上げは1割ほど減少した。デパートリウボウも「例年より中国客が減少したような印象を受ける」と語る。ただ、昨年は春節が2月にあり単純比較できず、肺炎の影響とは断言できないという。
県内スーパー最大手のサンエーでは、マスクなどの販売が好調で、1月の免税売り上げは前年同月を上回った。