県の2020年度当初予算案が決まった。本年度比で165億円増となる総額7514億円は、16年度に次いで過去2番目の規模だ。
子どもの貧困対策や首里城の復旧・復興、新型コロナウイルスや豚熱などの防疫対策、そして辺野古新基地建設阻止をはじめとする基地問題など、山積する課題に対応する重要な予算となる。
国の沖縄振興一括交付金の減額が続く中でも県予算案が2年連続で前年を上回ったのは、県税収入が過去最高を更新する1393億円となったことが大きい。これによって、行政の自主性や安定性を示す自主財源比率も36・6%まで高まった。
税収増は、消費税率引き上げのほか、好調な県内景気を背景にして納税者や納税企業が増えたことによるものだ。県内景気の回復は雇用にも表れ、19年の完全失業率は2・7%まで改善している。雇用の改善は税源の涵養(かんよう)だけでなく、県民所得の底上げや扶助費の抑制にも波及する。
税収を下支えする県経済の拡大をさらに持続させるため、残り2年となる沖縄21世紀ビジョン基本計画の総仕上げに向けた経済活性化の施策が重要になる。
経済振興を進めることと両輪で、県民の間の格差を広げないための目配りも大切だ。県が昨年3月に結果を発表した県民意識調査で、県が重点的に取り組むべき施策として最多の回答が「子どもの貧困対策の推進」だった。
子どもたちが大人の暴力におびえることなく健康に育ち、家庭の経済環境にかかわらず等しく教育を受ける機会が保障される社会づくりを求める声が高まっている。
こうした要請も踏まえ、予算案は玉城デニー知事が掲げる「沖縄らしい優しい社会の構築」に向けた教育福祉分野の拡充が目立つ。「高校中退者等キャリア形成支援モデル事業」や「養育者子育て相談支援体制強化事業」、米軍関係者との家庭・交際トラブルに関する「国際家庭相談ネットワーク構築モデル事業」などを新規に盛り込んだ。
知事公約の目玉であるバス通学無料化についても、10月開始に向けて4億1634万円を新規に計上した。住民税非課税世帯の高校生を対象に、県立高校生約4万2千人のうち最大5400人の支援を想定している。
だが、知事選で掲げた公約は「中学生・高校生のバス通学無料化に取り組む」だった。中学生を含めた全世帯の無料化からすると支援対象はまだ限定的だ。公約の達成に手間取っている理由について説明が必要だ。
同じ知事公約の「万国津梁(しんりょう)会議」の設置は19年度に着手したが、設置支援業務を受託した事業者と玉城知事が契約日前日に会食していた問題で批判を招いた。予算の効率的な執行、無駄の削減とともに、適正で透明性のある行政運営が不可欠だ。