背景に収益環境悪化 JAおきなわ統廃合


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JAおきなわの店舗再編について説明するJAおきなわの又吉宗光常務=7日、那覇市壺川のJA会館

 JAおきなわは全県的な店舗再編で支店や生産資材店舗などを統廃合し、経費削減により経営環境の改善を図る。金融機関はマイナス金利という外部環境により収益性が悪化し、全国的にも店舗削減などリストラ計画が進んでいる。だが、地域の農業振興や農家の生活を支えるため幅広く総合事業を展開してきたJAおきなわは、離島や過疎地の生活インフラを総合的に支える存在でもある。大規模な店舗の統廃合は組合員の反発を招いており、計画通りに改革を実行できるか前途は多難だ。

 7日に記者説明会を開いたJAおきなわの又吉宗光常務は、収益環境の悪化により現状の店舗数を維持することが難しいと再編計画の理由を強調した。昨年7月ごろから水面下で店舗再編の計画を進め、今回の案に至ったという。

 計画では金融事業を担う25店舗を完全に廃止し、店舗運営にかかる約10億円の費用を削減する。20日の経営管理委員会で支店の統廃合を最終決定する。

 組合員にとって唐突に浮上した店舗再編について、又吉常務は「経営環境が厳しい中、時間的な余裕がない。これから意見を伺いながら早い対応をしたい」と話した。

 対応を急ぐ背景には金利の低下によって、貸し出し事業で収益を上げづらい経営環境がある。特に農林中央金庫から預金利息として還元される「奨励金率」が減少することも経営悪化の要因として大きい。19年度から4年間かけて奨励金率が減り、計8億円の収入減少を見込んでいる。

 度重なる台風や農業人口の減少で、本業ともいえる農業事業は赤字が続いている。JAおきなわは金融、保険、ガス、葬祭事業など多方面で収益を上げ、赤字を穴埋めしてきた。

 JAおきなわの職員は「全ては本業である農業を支えるための経営基盤の確立だ。農家を守るために黒字経営を続けないといけない。支店を整理して経費を削減することで農家に還元する」と理解を求める。

 だが、十分な説明が無いまま店舗再編が決定することに、農家が納得する様子はない。

 本島北部の組合員は「ATMが使えないお年寄りは、年金を受け取る窓口がなくなると困る。経営悪化で地域に拠点をなくすことは、農家を見捨てることだ」と批判した。

 JAはこれまでも政府に構造改革を迫られる中、自主的な「自己改革」を掲げてきた。マイナス金利導入から約4年。経営環境の悪化は予測できただけに、改革が後手に回ってきたことについて又吉常務は「一過性の収益ではあるが有価証券の売却益などが積み上がり、利益自体は黒字が続いたため店舗再編を切り出せなかった」と振り返る。

 JAおきなわは総合事業の強みを生かし、特に離島が多い県内では農協の支店は営農を支えるだけでなく、日々の生活に無くてはならない存在だ。店舗再編で支店やサービスがなくなることは地域の生活インフラの弱体化にもつながる可能性がある。

 店舗の閉鎖阻止へ署名活動に乗り出す動きも本島北部で出ている中で、JAおきなわがこれまで主張してきた「弱者に頼られる協同組合」の真価が問われる。
 (石井恵理菜)