<金口木舌>砂に書いた思いやり


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 昨年、ラグビーワールドカップの一戦を熊本で観戦した。強豪フランスを相手にトンガが健闘し、勝敗が最後まで分からない抜群の好ゲームだった

▼印象的な場面があった。激戦を終えた選手たちがグラウンドを回り、観客に手を振り続けたのだ。意気に感じて応えるスタンドに歓声がこだました
▼先月、本紙に掲載された投稿。石垣市出身の村福信一さんは郷里に帰るとき、空港内で手を振って見送る整備士に窓越しから合図を返すという。整備士の何げない動作に「なにか心に迫ってくるのを感じる」とつづった
▼手を振り、振り返す。簡単なやりとりだが、相手への思いが真っすぐに伝わるからだろう。胸を温かくする。こちらも思いやりあふれる話だ。中国・武漢からの帰国者が滞在する千葉県のホテル前の浜に「まけるな!」の砂文字
▼待機中の客室で励まされたのではないか。窓に「ありがとう」と貼り出す人もいた。横浜沖のクルーズ船に向けてSNSでは「#がんばれダイヤモンドプリンセス」の投稿が相次ぐ
▼香港からのクルーズ船が那覇寄港をやめた。台湾などでも拒まれた。防疫上、やむを得ないのだろうが船中は心細いだろう。寄港時に「I LOVE NAHA」の電飾を掲げる客船もある。上陸できない客に何か発信できるのではないか。妙案はすぐには浮かばないが知恵を絞ってみたい。