元王者の比嘉大吾、復帰戦は今夜! 2年ぶりの計量は「無ですね」 試合前に語ったこと


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前日計量をパスした元WBC世界フライ級王者の比嘉大吾=12日、東京都の日本ボクシングコミッション(大城直也撮影)

 世界ボクシング評議会(WBC)フライ級の元王者、比嘉大吾が119ポンド(約53・97キロ)契約8回戦の前日計量をクリアした。2018年4月、3度目の防衛戦を前に計量失敗と初の敗北で表舞台から遠ざかったが、13日の後楽園ホールで約1年10カ月ぶりにリングに上がる。激動の日々を乗り越えて再起を図る24歳は、意気込みについて多くは口にせず「親や後援会、スポンサーのため」と語った。「それしかモチベーションはないっすからね」と、どこか達観した雰囲気を漂わせていた。対戦相手はフィリピン・バンタム級11位のジェイソン・ブエナオブラ。午後7時48分開始予定。13日の6回戦で白井具志堅スポーツ所属の屋嘉部悠大(沖縄水産高出)がライト級、山口臣馬(同)が119ポンド契約で出場。4回戦にはミドル級の伊藤大賀(前原高出)が出場する。屋嘉部と山口、伊藤の3人も12日の前日計量をクリアした。

 計量前のメディカルチェックから集まりだした報道陣に「体重オーバーを期待してますか」と、冗談を飛ばすと、計量台の上でも比嘉大吾は余裕の表情だった。今回は119ポンド(約53・97キロ)契約。朝にはクリアできる体重だと分かっており、係員が「53・80キロ」と、リミットを下回ってパスしたことを伝えても、織り込み済みというように落ち着いていた。

 フライ級(50・80キロ)から約3キロ上回るため、減量中のトラブルはなかったというが「2年ぶりなのでなかなかきつかったですね」と振り返った。今回は食事専門のトレーナーに従って調整してきたという。体格も、ぎりぎりまでそぎ落としていたフライ級とは異なり、重圧感が増していた。体調は万全の様子だが、冗談を交えつつも闘志を見せていた約1年10カ月前とは受け答えも違う雰囲気だった。

 計量も「ただその時がきた」だけで、クリアした感想も「あんまなんとも思ってない。無ですね」。意気込みは「なんも思ってないと意気込みも出てこないものですね。支えてくれた仲間のために頑張ります」と、答えに間を置いたり、言葉を探したり。KOよりも「来ている人が楽しい試合をして、結果倒せればって感じ」とひょうひょうとしていた。

 デビューから連続KOで王者になり、日本新記録の16戦連続KO勝利も期待されたが、計量失敗とプロ初黒星、そして長期の活動停止処分という試練の連続だった。再起を図る比嘉へ、試合に向けて強い言葉を引き出そうとする報道陣の質問も何度かあったが「試合前だったらなんか出てくると思うけど、今のところまったく(気持ちはない)」、「(手応えは)悪くはないかも分からない。今までやってきたことも、人も違うし、俺もよく分からないって感じです」と、以前と異なってマイペースを崩さなかった。

 具志堅用高会長によると、スパーリングはアマチュアの王者などと約70回やってきたという。具志堅会長は「うまく減量できた。明日は大丈夫じゃないか。スパーも見たけど、スピードやキレは(前と)一緒。あとは気持ち次第だから」と、真剣な表情で語った。