県内のタクシー運転手の新型コロナウイルス感染を受け、タクシー業界には不安が広がる。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客を乗せた運転手は複数おり、「自分も感染するのではないかという不安が消えない」と訴える。一方、タクシー各社の対応はまちまちで対策が統一されておらず、県や国への不信感も募らせている。
「出勤の自粛も自己判断。何の指針も示されないのはおかしい」。本島中部のタクシー会社に勤務する女性運転手(58)は訴える。感染が確認された運転手と同じ2月1日、クルーズ船の乗客と複数回接触した。日本人客を那覇市の国際通りまで5回程度送ったほか、国際通りからクルーズ船に戻る中国人客も3回程度乗せた。
3日にクルーズ船乗客の感染が発覚したため、5日から出勤を取りやめた。不安から同日中に南部保健所に検査を希望したが「発熱を確認してから来てほしい」と断られたという。
「同居する孫が発熱し、事情も伝えたが、経過観察と言われるだけだった。国や県からは何の指示もなく不安が募った」と語る。
タクシー各社の対策も足並みがそろっていない。マスクとアルコール消毒液を乗務員に支給する会社がある一方、予防対策を運転手任せにする会社もある。
那覇市内の運転手(53)は「マスク着用も義務付けられておらず、感染予防は丸投げだ」と語る。
130社が加盟する県ハイヤー・タクシー協会は14日、緊急役員会を開き、感染拡大予防のため、患者の運転手が勤務するタクシー会社に営業自粛を求めた。加盟社には手洗いの励行やマスク着用を促す通達をした。同協会の稲益強副会長は「これ以上の感染拡大を許すわけにはいかない」と危機感をあらわにした。