新型コロナウイルスの感染拡大は県内でも感染者が確認される局面となり、県経済に与える影響も深刻さを増していく。春節(中華圏の旧正月)に重なった中国団体客の宿泊キャンセルが既にホテル業などに打撃を与えているが、今後は修学旅行をはじめ、観光入域客の約7割を占める国内客にも悪影響が出てくる恐れがある。好調な県経済を引っ張ってきた観光業界の活動が停滞すれば、影響は産業全体に広がっていく。
外資系ブランドが運営する那覇市内のホテルでは、1月末から相次ぐ宿泊キャンセルに加えて、新規の予約が入らず、3月以降は収支が赤字になる可能性が出てきたという。4月の新規採用者の入社に変わりはないが、以降の採用計画については凍結することを検討している。
同ホテルの関係者は「最近まで散々人手不足だと言っていたが、人を雇えない状況になってきた」と肩を落とした。
■人手不足から一転
2019年に沖縄を訪れた観光客は1016万3900人を記録。7年連続で過去最高を更新し、暦年で初めて1千万人を突破した。国内客が723万人を占めるが、海外客も存在感を増し、台湾が93万人、中国が75万人を数える。
那覇市内の大手中国専門旅行社は、1月末から3月までに3億円の売り上げを見込んでいたが、現時点で2億5千万の損失が出ている。中国客が止まったことで台湾や香港の旅客を頼りに経営を続けているが、県内で感染者が出たことで不安は深まっている。
14日に旅行客から沖縄の安全性について問い合わせがあったといい、同社役員は「沖縄ではまだ感染は拡大していないとしか説明ができない。避けたいところだが、悪い状況が続くようなら従業員の出勤日数を減らすことも検討している」と頭を抱える。
県内で初の感染となったタクシー乗務員は、クルーズ船客を乗せたことが要因だった。観光客の増加に伴い感染症などの侵入リスクも高まるという指摘が的中する形となった。
クルーズ船客からの感染という経路について、外国人客の来店も多い大型商業施設の担当者は「社員への手洗い、うがい、マスク着用の呼び掛けを徹底している。今後の対応は早急に議論していかないといけない」と語る。
■「風評」への懸念
県内の観光関係者は「『風評』被害が怖い」と口をそろえる。01年に米中枢同時テロが起きた後には、沖縄に米軍基地があるという理由で修学旅行のキャンセルが相次いだ。
春以降、4~6月は県外中学校の修学旅行シーズンを迎える。県ホテル旅館生活衛生同業組合の宮里一郎理事長は「今回も1校がキャンセルになると連鎖反応で全てがキャンセルになりかねない」と警戒する。
航空会社の関係者は「『沖縄に行くと危険』などの情報が広がると、実際の危険性以上に風評が広がりかねない。観光客の1千万人突破も厳しくなるのではないか」と懸念する。
一方で、国内で感染が広がりを見せ、実際に沖縄でも感染者が出ている状況となったことに、県幹部は「この時期に『沖縄は安全だからどんどん来てください』とキャンペーンを展開できないのも事実だ」と困惑を隠さない。「非常に難しい状況にある。今は耐えるしかない」と早期終息を願った。 (中村優希、外間愛也)