新型コロナウイルスは沖縄経済にどう影響? 日銀那覇支店長が分析


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桑原康二氏 日銀那覇支店長

 新型コロナウイルスによる肺炎(COVID19)は、既に沖縄経済の柱である観光と個人消費を中心にマイナスのインパクトを与えている。企業へのヒアリングでは、飛行機やクルーズ船の減便や乗客減少、タクシーや観光バス、百貨店やドラッグストアの免税品、飲食店などで売り上げが減少し、ホテルのキャンセルも出ている。

 県内で感染者が出たことで、今後は海外や本土からの観光客や出張などのビジネス客が減ってさらに影響が出る恐れがある。県民にも人の集まる商業施設などへの外出を控える動きが出てくると、個人消費全般や県内観光にもマイナスの影響を与える。

 昨年、ホテルなどの供給が増え、競合激化によって個別企業の収益は苦しくなっていると報告した。今までは需要が伸び続ける中での供給増だったが、今回は需要も急減している。影響はこれまでより大きく出るだろう。春の賃金交渉の時期でもあり、ベアにも影響する可能性がある。

 一方で感染症による需要減少は、地震や台風のような災害とは異なりインフラが毀損(きそん)されるわけではないので、終息すれば経済活動は比較的短期間で回復すると考えられる。ただし、観光は製造業のように抑えられていた需要を一気に取り戻すような生産増強は難しい。時間をかけて取り戻す形になるだろう。

 日銀としては、現状では県内経済の基調判断に影響はしていないと考えている。拡大基調のコアは所得から支出への前向きな循環メカニズムが維持されているかという点だ。仮に長期化して所得や雇用に悪影響を及ぼすことになればコア部分への影響も想定されるが、足元ではそういった動きは確認されていない。

 観光業は外部要因に左右されやすい産業だ。今回の事例を教訓に収益性を高めることが求められる。ただ、本来は好調時でないと取り組む余裕はない。終息後に官民連携して筋肉質の経営体制にする取り組みが必要になる。