「流行は避けられない」 沖縄の医療関係者が想起する2009年の経験 


「流行は避けられない」 沖縄の医療関係者が想起する2009年の経験 
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 県内でもついに確認された新型コロナウイルスの感染。県はまん延を防ごうと、感染源となったクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の乗客と接触が否定できないバス運転手やタクシー運転手ら約200人の健康観察を続けてきた。さらに感染者であるタクシー運転手の60代女性の濃厚接触者の特定作業を進めている。一方、県内医療関係者らの危機感は強く「流行は避けられない」と認識し、流行をいかに遅らせるかに議論を移そうとしている。

 「封じ込めから新たな感染拡大に移行しているように感じる」。県医師会が15日夜に緊急に開いた会議で同会の宮里達也副会長は国内の感染状況をこう評し、懸念を示した。県内での感染者は14日に分かった女性だけだが「人の流れは制限できない」と市中感染を警戒する。

 県医師会は会議で人が密集する大規模イベントの自粛を県民に依頼する異例の呼び掛けを確認した。想起したのは2009年の新型インフルエンザの流行だ。同年6月29日に感染者が確認されると約1カ月後には全県に拡大。救急病院に患者が押し寄せ、特に週末に殺到し院内感染や救急医療パンクの危機を招いた。

 流行は一時小康と、再燃を経て翌年2月に終息した。県によると、患者は推定約22万人とされ、入院は約550人、重症者21人、死亡者3人だった。

 那覇市立病院も外来が混乱した病院の一つ。当時の経験から今回、いち早く見舞いや救急外来の制限を決めた。多くの死者が出ている中国湖北省武漢市は病院で大流行が起きたと指摘される中で、医療提供の体制維持が被害を最小限に抑える鍵になるとして、県民に理解を求めている。

 県の調査によると、09年のインフルエンザは合唱コンクールや中体連の試合、居酒屋などが感染拡大の場になった。当時はそれでも既存の薬が使えたり、県内発生から約4カ月後にはワクチンができたりした。

 しかし新型コロナウイルスは現時点で特効薬はなくワクチン完成も未定だ。無症状感染の報告もある。宮里副会長は「1~2カ月で何万人も感染ということは避けなければならない」とイベントの在り方や学校の対応なども早めに確認することが必要とする。新型インフルエンザは発生から8カ月で終息したが「それでも医療現場は大変だった」とし、今回も感染が広がっても「1年かけて緩やかな流行で抑えることが理想だ。医療を守ることは県民を守ることになる」と力を込めた。(謝花史哲)