【浦添】浦添市の広報誌「広報うらそえ」が波に乗っている。このほど、全国広報コンクールの沖縄県代表に3年連続で選ばれた。イラストと写真を効果的に使い、硬軟織り交ぜたテーマを大胆に展開。審査員から「雑誌のような完成度」「挑戦的で秀逸」の声が上がるなど、評判が高まっている。
編集を担うのは市国際交流課の5人。3年ほど前、編集長の上江洲芳樹さん(40)が誌面改革ののろしを上げた。「ただ面白いだけでは駄目だが、まずは手に取ってもらわないといけない」
担当課から来た原稿を「右から左に」(上江洲さん)載せていた誌面が見違えるほど変わった。毎号、特集を組むようになり、2017年4月にはフリーデザイナーの内間梓さん(41)を採用。多彩なイラストと写真で視覚に訴え、「読みたくなる誌面」化をぐいぐい進めた。内間さんも取材に同行し、特集を練り上げる。
昨年は全国広報コンクール(公益社団法人・日本広報協会主催)で初入選した。今年も19年11月号が県代表に選ばれ、全国での審査結果を待つ。
特集で取り上げたのは、松本哲治市長が公約に掲げる「深夜の子連れ飲食の制限」。有識者や保護者らに取材し、賛成と反対、双方の声を紹介した。コンクールの審査員からは「賛否ある問題を過不足なく取り上げている」「市民一人一人に考えてもらう企画となっている」などと評価された。
特集の内容や原稿は、担当課との丁々発止のやりとりを経て完成する。「余計なこと書くな!」「クレームが来るのではないか」と“注文”が入り、ボツになる原稿もあるという。「子連れ飲食」の特集を手掛けた上原勇人(はやと)さん(41)は「『もうちょっと書きたいのに…』と思うこともあるが、独り善がりにならないように気を付けている」と話す。
担当3年目の棚原由香さん(31)は、2月号の成人式特集で「1人でも多く」の新成人を取り上げた。「知り合いが出ていたら読んでもらえる。広報誌を通じ、行政と市民の距離を近づけたい」。ファッション誌から機内誌まで目を通しヒントを探る。
「広報うらそえ」は浦添村時代の1957年9月に創刊され、今年2月号で722号となった。現在は20ページが基本で、約4万8千部を印刷。自治会を通じて全戸配布している。昨年の5月号からは、英語や韓国語など10言語での電子配信も始めた。県内初という。
市民からは「おしゃれになった」「雑誌みたいで読みやすい」などの声が寄せられ、編集部も手応えを感じている。編集長の上江洲さんは「評価はありがたい。飽きない誌面構成を意識して、若い人にも見てもらえる広報誌にしたい」と、躍進を誓う。 (真崎裕史)