ルート不明で感染拡大どこまで 新型肺炎対策が新たな局面に 長引けば観光収入に大きな打撃も


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危機管理対策本部会議を終え、感染ルートなどについて記者の質問に答える県の砂川靖保健医療部長(中央)ら=20日午後、那覇市の県庁

 3人目の新型コロナウイルスの感染症患者が確認された20日午後6時すぎ、県庁6階の特別会議室は重苦しい空気が漂った。県危機管理対策本部会議の開催で急きょ集められた幹部らは一言も発さず、静寂が包む。会場入りした玉城デニー知事は一礼して状況の説明を始めた。「(クルーズ船)ダイヤモンド・プリンセス号の乗客や患者との接触は現時点では不明」。感染ルートが分からない3例目の患者が出たことで、“市中感染”の可能性が現実味を帯びることになった。封じ込め対策を進めてきた県が直面する新たな局面に衝撃が走った。

異例の「説明」

 午後5時すぎ、県議会の代表質問が終わった直後、玉城知事は新里米吉議長に発言する機会を求めて壇上に立ち、3例目が確認された事実を説明した。午後4時半に感染が発覚し、議会で知事自らが説明する「異例の対応」(県幹部)は県の危機感を表すものだった。

 民間シンクタンクは感染拡大の影響が7月ごろまで継続し観光客数が減少した場合、県内の観光収入が281億円減少するとの試算も出ている。県幹部の一人は「観光分野だけでなく県内企業の経営に影響が出るレベルに達すると問題はさらに大きくなる」と懸念を示した。

 厚生労働省などは新型コロナウイルスの感染拡大を防止するため、大規模イベントの開催に関するガイドライン(指針)を策定した。県によると、20日の県危機管理対策本部会議でも県内イベントの自粛について議論があった。

市中感染の可能性

 「市中感染の可能性は否定できない」。砂川靖県保健医療部長は20日夜に開いた記者説明で、いつどこで感染したか追跡できない「市中感染」の可能性もあるとの認識を示した。

 これまで県内で発生した2人の患者はいずれも2月1日にクルーズ船の乗客と接触を持っていた。だが、3人目の男性は乗客や感染者との接触は20日の時点で分かっていない。さらに、3人目の患者は体調の異変を感じた後、感染症指定病院以外の病院に外来で訪れており、接触した医療従事者が濃厚接触者となる可能性も否定できない。感染がどこまで広がっているのか不透明なまま、対策が必要となる難しい局面に県はたたされている。

情報収集急ぐ

 県は4段階でリスク評価を実施し、現在は発生早期の「第1段階」としている。ただ、砂川部長は記者説明で3人の患者が出ている本島南部について「(段階を)第2、第3と考える時期にあるかもしれない」との考えを示した。リスクを地域ごとによって評価する「フレキシブル(柔軟)な対応」を検討していく構えだ。砂川部長は「県民も不安を抱くと思う。早急に行動履歴を調査して、できる限り、感染ルートは明らかにしていきたい」と強調。県民の不安払拭(ふっしょく)に向け、情報収集と公表を急ぐ考えを示した。
 (池田哲平)