【記者解説】JAおきなわ再編、合意形成が不可欠


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
店舗再編計画の承認見送りなどを説明するJAおきなわの普天間朝重理事長(左)と経営管理委員会の前田実会長=20日、那覇市壺川のJA会館

 JAおきなわが20日の経営管理委員会で店舗再編案の承認を見送ったのは、農家や地域による合意形成が不可欠だと判断したからだ。会合では経営管理委員から執行部に対し、「組合員に丁寧に説明する必要がある」という意見が多く出たという。ただ、低金利の影響や農林中央金庫からの奨励金が減少する中で、JAおきなわが店舗再編に踏み切る意思は固く、地域の理解を得て店舗再編に踏み切れるか注目される。

 JAおきなわが性急に店舗再編を進めた背景には、経営基盤強化に向けて全国の各JAで策定する「経営改善計画」の提出が3月末に迫っていることがある。JA全中が示した全国的な方針で、JAおきなわも全国と足並みをそろえて計画を作る必要がある。

 またJAの信用事業に対して指導を行う農林中央金庫は、JAの破綻を未然に防ぐために、自己資本比率や事業利益の報告をJAに義務付けている。事業利益が2年連続で赤字になり、かつ自己資本比率が10%を切った場合、農林中央金庫によってレベル格付けを受け、融資などさまざまな制限が生じる。最悪の場合、強制的に店舗の再編が進められてしまう。

 関係者によると、JAおきなわが経営改善に取り組まなかった場合に存続できる支店は、農林中央金庫の試算で35店舗にとどまり、約70店舗を強制的に廃止しなければならない。このことが今回の店舗再編計画案を緊急的に策定する対処につながり、廃止や統合の対象となった地域から「農家を見捨てるのか」という批判を招くことになった。

 収益の悪化で改革が差し迫った状況ではあるが、JAは非営利の協同組合である以上、店舗再編も組合員の合意形成が不可欠だ。組合員や地域と課題を共有し、段階的な合意形成を踏むことが、今後のJAおきなわの行方を左右する。
 (石井恵理菜)