[日曜の風]辺野古移設 やると決めたから?


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 2月17日の「琉球新報」によれば、「名護市辺野古の新基地建設で、水面下70メートルより深い地盤が『軟弱』であることを示すデータが存在していた問題について、立石雅昭新潟大名誉教授(地質学)ら調査団がこのデータを基に護岸の安定性を独自に検証したところ、最悪の場合崩壊する可能性があるとの結果が出たことが16日、分かった」という。それなのに、防衛相は再調査する必要はないといっている。また、嘘(うそ)をつかなきゃならないからだろうか?

 2016年、委託業者によるボーリング調査で、軟弱地盤が90メートルに及ぶことがわかった。しかし、政府は18年に資料請求されるまでそのことを明かさなかった。なぜなら、この国は70メートル以上の地盤改良の実績はなく、それは不可能に近いことだ。資材を運ぶ大型船から作らなくてはならない。

 そして、19年に防衛相が、「地盤改良は70メートルまでで、杭は7万7千本で足りる」といいだした。

 なぜ、事実を隠蔽(いんぺい)したり、嘘をついたりしてまで、辺野古新基地建設を進めたいのだろうか? どうしても工事をつづけたい、それが理由になってやしないか? 

 防衛相は政府の意向に沿い、政府はアメリカと話をしたくない。もちろん、建設利権などもあるだろうが、概(おおむ)ね、やると決めたからが今の理由になっているように感じる。

 防衛相も政治家も、今の自分しか見えていない。彼らは貧困に喘(あえ)ぐ子どもたちを放っておいて、出来るかどうかもわからない辺野古の地盤改良に果てしなく血税を注ぐ、そういったことに疑問や罪悪感も持たない。辺野古の綺麗(きれい)な海を荒らすだけ荒らし、新基地建設に失敗しても、そのとき自分たちが責任を取る立場にいなければいいという考えだ。自分さえ優雅な老後を送れれば。

 しかし、やると決めた物事を途中で辞めると、なぜ辞めたのか理由が求められてしまう。自分たちの醜さがバレてしまう。そんな風に思えてならない。

(室井佑月、作家)