玉城県政への対立姿勢を鮮明にする政治集団が誕生したわけとは… 県議選前の思惑が交錯


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 6月7日投開票の県議選に向けて県政与党の過半数割れを掲げる政治集団「21令和の会」が誕生した。中心メンバーである安慶田光男前副知事や平良朝敬前沖縄観光コンベンションビューロー会長は菅義偉官房長官との関係が深いほか、与党内の一部勢力とも良好な関係を築いており、与党内には今後予想される「令和の会」による切り崩し工作に警戒感が広がる。県議選告示まで3カ月に迫り、候補者や政党間の思惑が交錯する中、「令和の会」が台風の目になる可能性がある。

■保守・中道系

 「『オール沖縄』勢の保守・中道系議員を取り込まなければ過半数は取れない」。13日に那覇市内のホテルで開かれた設立総会で安慶田氏は過半数獲得に向けた戦略をぶち上げた。県議選では、自民が21人の公認・推薦候補を擁立。公明は4人、元維新の議員2人が出馬を決めている。定数48の県議会で過半数を獲得するには25人の当選が最低条件だ。そこで「令和の会」が目を付けたのが「オール沖縄」勢の保守・中道系議員で、複数の関係者によると、既に数人の現職県議に接触しているという。

 2014年の知事選で誕生した翁長県政下で副知事を務めた安慶田氏と菅氏とのパイプは県内政界や経済界では広く知られている。2人の関係は安慶田氏の副知事退任後も続いており、菅氏は来県する度に安慶田氏と面談している。今回、設立した「令和の会」についても既に安慶田氏が菅氏に報告しているという。

 ただ足元の自民県連内には安慶田氏側の動きに冷めた見方もある。県連関係者の一人は「候補者を応援してくれる分はいいが、彼らに主導権を握らすわけにはいかない。いずれにしてもある程度の距離は置かざるを得ない」と指摘した。

■経済界の動き

 一方、経済界では現在、自民県連最高顧問の仲井真弘多元知事と国場幸一国場組会長の2人が建設業を中心に県内企業の取りまとめ役として経済界の支持固めに動いている。設立総会では出席者から仲井真氏や国場氏らと連携をどう図るかなどの疑問が出たという。

 一方、与党内には「令和の会」について自民側と同様に冷ややかに見る向きが多い。与党幹部の一人は「メンバーを見るとほとんどが自分たちの影響力を誇示したいだけではないか。何より与党系議員の多くは玉城知事の後ろ盾がないと選挙を勝ち抜くのは厳しいと分かっている」と指摘した。

 ただ、かつて「オール沖縄」勢の主要メンバーが玉城県政への対決姿勢を鮮明にしたことに対する波紋は確実に広がっており、別の与党幹部からは「『オール沖縄』が分裂しているとの印象にならないか心配だ」との懸念が上がる。

 一方、「令和の会」の副会長を務めることになった平良氏は政治集団の立ち上げに至った理由について「玉城知事は翁長県政の後継とは認められない。新型コロナウイルスの影響が観光業界に広がる中、打開策も講じられていない。今後の沖縄振興を考えた時、今の玉城県政では不安があるからだ」と述べた。
 (吉田健一)